2010年02月09日 11:18 pm JST
日経平均は1万円を割り込んで元気がないが、企業業績や輸出動向からみた日本経済は、予想外に底堅い。
新光総合研究所によると、4日までに決算を行った東証一部上場企業の2010年3月期経常利益見通しは前年比プラス9.7%だった。また、第4四半期(2010年1─3月期)の好調を予想する声が多く、企業業績は尻上がりによくなっているイメージだ。
その要因は、中国を中心にしたアジア諸国の予想以上の需要好調にある。新日本製鉄の谷口進一副社長は8日、ロイターのインタビューの中で、需要の堅調なアジア向け輸出を強化する方針を明らかにし、輸出比率が現在の4割前後から5割超に上昇する可能性に言及した。
ある政策当局者は、アジアからの需要が強いため、国内景気の軌道は、当初の見通しよりもやや上に来ているとの見方を示している。
中国などの需要が予想以上に強い理由は何か──。
国際経済の動向に詳しいある関係者は「中国経済には、1960年代の日本のような若々しさがある」と指摘する。インフラ整備をはじめ設備投資をするべき範囲が大きく、需要が需要を生む構造になっているという。
さらに1960年前後の日本は経常赤字が天井になって景気拡大にブレーキがかかった。これと比べると、膨大な経常黒字を抱えている中国は、経常赤字の限界を意識することなく、必要な原材料や資本財を輸入し、生産を大幅に増やすことができるとその関係者は説明した。
中国などのアジア諸国の好調さが、内需の力強さに支えられているとすれば「日本にとって、輸出好調は案外、長期化するかもしれない」(国内市場関係者)という見通しが当たるかもしれない。
アジア好調の恩恵を受ける企業の数はまだ限定的だろうが、好調な企業の様子をみて、巧みに追いかけることに長けた日本企業も少なくない。昨年末の暗闇のような景気見通しに一条の光が差してきたことは間違いないと思うが、どうだろうか。
(写真/ロイター)
2010年02月08日 3:24 pm JST
*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。
関志雄 野村資本市場研究所 シニアフェロー
中国経済は、2008年9月のリーマンショックを受けて、一時景気減速を余儀なくされたが、素早く打ち出された政府による拡張的金融財政政策が奏功し、先進国に先駆けて回復してきた。
08年9月以降、世界的金融危機を乗り越えるために中国政府は、拡張的財政政策とともに利下げや預金準備率の引き下げ、そして融資に対する総量規制の撤廃など思い切った金融緩和を行った。これを受けてマネーサプライ(M2)と人民元貸出の伸びは加速し、資産価格が高騰しており、インフレ圧力も高まりつつある。
08年11月の初めに1700ポイント近辺まで急落した上海総合指数はその後急伸し、現在、3000ポイントを挟む水準で推移している。一時、調整局面に入った不動産価格も高騰しており、バブルの様相を呈している。70大中都市住宅価格は、08年8月から7カ月連続して前月の水準を割ったが、09年3月以降、上昇傾向に転じ、12月には1.5%(年率換算19.6%)に達している。前年比で見ても3月のマイナス1.3%を底に、12月には7.8%に加速している。
その上、09年2月以来マイナスとなっていたインフレ率(消費者物価指数(CPI)、前年比)は11月には0.6%とプラスに転じ、12月は1.9%に加速した。インフレ率は、経済成長率より約3四半期遅れて動くことが観測されており、最近の景気の急回復を受けて、今後さらにCPIが上昇すると予想される。
安定成長を持続させるために、当局はこれまで取ってきた拡張的金融政策の出口戦略を実施し始めている。すでに09年夏以降、一部の融資への制限が導入され、これを受けて、貸出の前月比の増加分が縮小してきている。
中国人民銀行(中央銀行)は、2010年1月18日から大手銀行に適用される預金準備率を0.5%ポイント引き上げた。今後、インフレ率がいっそう高まるにつれて、利上げを含むさらなる引き締め策が取られるであろう。これまでの経験から判断して、CPIで見たインフレ率が4%を超えることは、利上げが実施される目安となる。その時期は今年の年央になるだろう。
金融引き締めへの転換が遅れた場合、資産バブルが膨張し、インフレ圧力も高まるため最終的に当局は、より強烈な金融引き締めを実施せざるを得なくなる。その結果、バブルの崩壊に伴って、銀行部門は多くの不良債権を抱えることになり、経済全体も大きい打撃を受けることになる。
最近の金融政策の出口戦略をめぐる一連の動きは、株価の下落要因となったが、このようなハードランディング・シナリオを避けるための予防的措置としてむしろ評価すべきである。
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2010年02月05日 9:11 pm JST
世界の金融・資本市場が4日から5日にかけて大揺れになった。
5年物ポルトガル国債の保証料が4日、過去最高になったのをきっかけに、欧州クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、スペインやポルトガルの銀行のスプレッドが急拡大。つれてスペイン株式市場での下落が大きくなり、世界的に欧州のソブリン・リスクに目が向くようになった。
株式市場では、株価下落の連鎖が欧州から米国、日本やその他アジア諸国に波及する一方、ユーロが対ドルや対円で急落。円から見ると、ユーロ以外のクロス通貨でも円が独歩高となり、ドル/円でも一時、88円台まで円高が進んだ。
この市場変動の奥には、ユーロ圏の存立基盤がどうなるのかという疑念まで出てきているという。東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は「PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)を合計すると、その経済力はユーロ圏の20%を超す。すでに中小国の混乱の域を超えつつあるという認識がマーケットにある」と指摘する。
ポルトガルやギリシャは、国債消化の80%以上を海外の投資家に依存している。いったんマーケットに疑念の目を向けられると、国債が売れない事態に直面する。
一方、国と地方の債務残高が1000兆円に迫ろうとしている日本に、PIIGSの混乱が波及する兆しはない。5日の長期金利は前日比0.020%低下の1.355%とソブリン・リスクの中で国債が買われる展開だった。
この要因を簡単に言えば「1500兆円の個人金融資産の威力だ」と三菱UFJ証券・チーフエコノミストの水野和夫氏は指摘する。この1500兆円の存在感を世界の市場関係者は熟知しており、事実上、ソブリン・リスクから東京市場は遮断されている。
だからと言って、野放図な政府主導の事業などで国債発行額を増大させ続けることにも批判が多い。
東海東京証の斎藤氏は「財政出動の効果は限定的かつ短期的で、財政に頼った発想をやめるべきだ」と話す。それよりは「複雑に入り組んだ非効率な制度を見直し、特別会計の規模を縮小させ、そこであまった税金を先端的な技術の開発や生産性の向上に役立てるよう使うべきだ」と提案している。
縮こまったままの発想を転換し、1500兆円を保有する優位性を認識して、日本の行方を考えるのはどうだろうか。
(写真/ロイター)