ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月19日 2:21 pm JST

古くて新しい中小企業の金融問題

投稿者 インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

kumano第一生命経済研究所 主席エコノミスト 熊野 英生

「中小企業金融円滑化法」が、臨時国会に提出されている。貸し渋り問題に注目が集まって見逃されがちなだが、現在の日本には中小企業へのリスクマネー供給の課題がある。

簡単に言えば、ベンチャーなどを対象に将来、高成長が見込めそうな先にリスクマネーを仲介する金融機能の開拓である。日本経済に足りないのは、イノベーションを巻き起こすような事業者の試みに対するリスクマネー支援であろう。

ところが、銀行は長引く構造不況で自己資本の余力をすり減らし、思い切ってリスクが取れなくなった。この課題は、もう十数年来、議論されてきていまだに有益な処方せんが確立されていない。

リスクマネーの問題には、いくつかの歴史的変遷がある。1999年は株式市場に新興市場が創設され、2006年までは新規公開(IPO)の企業に人気が集まった。しかし、熱気は新興市場の株価が軟調になってくると、急速に冷めてしまった。新興市場は深い低迷状態から抜け出せない。

このIPO市場の停滞に絡んで、ベンチャーキャピタルのファイナンスにも悪影響を与えている。有望な企業を探し出して、将来のIPOに向けて支援をするベンチャーキャピタルは、新しいビジネスチャンスの「ゆりかご」的な存在である。彼らが、ベンチャーの成長支援ビジネスをうまくやっていけるのは、事業の川下にIPO市場があって、そこを出口(Exit)とすることで、高収益を得られるという新興市場との共生構造があったからだ。

新興市場が停滞することは、ベンチャーキャピタルの採算性を低下させる。

もう1つの流れとして、中小企業向けの融資を担保によることなく、個別の中小企業を簡単な書類審査で融資するタイプのビジネスローンの試みがあった。大手銀行では2004年あたりから、こうしたビジネスローンを次々に導入していった。2006年3月末ではメガバンク3行で5兆円に達したとされる。

しかし、多くの銀行がビジネスローンを一斉に手がけると、銀行側にも競争圧力が生まれて、大規模な資金がこの市場に流れ込んで、意図した採算性が確保できなくなってしまった。

実は、ベンチャー企業でも、事業運営を助けるために金融機関から人材が送り込まれてきて、それを通じて経営体質の改善が進められ、事業採算が高まるケースが少なくない。これは、昔ながらの銀行や中小企業金融機関と取引先の関係に戻っている流れとも言える。

ベンチャーキャピタルでも、単に多産多死型のビジネスチャンスを大量に寄せ集めて、大数の法則を使って管理しているのではなく、まずは良い企業を見抜き、さらにそこに経営改善の援助を行うような地道な活動を行っている。

以上のように、リスクマネーを供給するという課題は、過去からの挫折と取り組みの経緯がある。将来の産業発展のために中小企業は、ビッグビジネスに飛躍していけるような金融の仕組みをしっかり整備することが重要である。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年11月18日 4:52 pm JST

見えない米利上げ時期

投稿者 田巻一彦

G20/バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が16日、現在の超金融緩和政策を長期間継続するとあらためて述べたことで、外為市場ではドル・キャリートレードが活発化してきた。

米市場では、ついこの間まで「出口が近いのではないか」との思惑が台頭していたが、マーケットセンチメントは様変わりだ。

私は10月15日の投稿で、コーンFRB副議長の発言を引用しながら、米国でも超金融緩和の出口政策発動は、かなり先になる可能性を指摘した。

FRBがその後に発信してきたメッセージは、ほぼその通りだった。16日のバーナンキ議長の発言の中にも「FRBは雇用の伸びと物価安定の双方にコミットしている」と述べた。出口がいつかを予想する上で、この発言が大きなポイントになりそうだ。

つまり、上昇を続けて10%台に乗せた失業率がどこで頭を打つかが1つの課題だが、9-10%台でウロウロしている段階では「雇用の伸び」にコミットしているFRBが、利上げ方向に動くの難しいと見るべきだろう。

現在の米市場は、来年秋ごろの利上げを見込んでいるが、その時までに米雇用情勢の改善が明確になっている保証はない。厳しい雇用情勢を反映して個人消費が振るわない状況が継続すれば、来年いっぱいの政策金利据え置きの可能性もかなり高いのではないか。

もう1つ、米市場が余り注目していない点がある。それは米金融システムの復活度合いだ。米銀の多くは、確かに公的資金を返済し、正常化に向かっているように見える。しかし、肝心の貸し出しは、全く伸びていない。金融仲介機能は不全状態が継続している。

「資金需要がないからだ」と、どこかの国でのできごとのような反論が出てくるかもしれないが、資本市場での資金調達の回復ぶりなどをみれば、そうではないと言えると思う。

米市場関係者の多くは否定的だが、金融機能不全と実体経済の低迷が絡み合いながら、低成長が継続するという日本の「失われた15年」と似た状況が現出するのではないかと思えてならない。

(写真/ロイター)

2009年11月17日 1:29 pm JST

高まる無国籍通貨「ゴールド」への関心

投稿者 インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

亀井幸一郎 マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 金属・貴金属アナリスト

金価格の上昇が続いている。今回の特徴は、静かな上値追いという点にある。

それでは、なぜこうした相場展開となっているのだろうか。年始以降、ここに至る金価格の上昇は、投資需要の記録的な増加によってもたらされてきた。1─3月期に見られた大手ヘッジファンドによる金ETFの集中買いに始まり、その後は世界的なスクラップ(金製品の売り戻し)のこれまた集中的な売りを継続的な投資マネーの流入が吸収するという経過をたどってきた。

その間にNYコメックスでは、ファンドによるネットの買い建て玉(ネット・ロング)が重量換算にして概ね500─600トンという高水準を維持してきた。先物市場での600トン近いネット・ロングは、これだけの規模の将来の売り要因を抱えていることを意味し、過去の経験則では内部要因からみて、これだけで十分な反落要因といえる規模である。

ところが、今回9月に至る価格展開は、この高水準のネットロングを抱えながら、比較的安定した900ドル台前半でのレンジ相場を繰り返してきた。既にこの段階で、従来相場との質的な違いを示していたのである。

投資需要急増の背景は、米国の金融政策とそれを映すドル安見通しである。米連邦準備理事会(FRB)によるゼロ金利政策と超ド級の量的緩和策、オバマ政権が採った史上最大の財政出動策を受け、過去最大に膨れ上がった財政赤字は、今後複数年にわたり記録的水準を続けるとみられる。

昨年秋のリーマン・ショック後に高まった信用リスクのない金への見直しの動きは、機関投資家のみならず個人富裕層を巻き込んだ大きな流れになっているのだが、それは投資対象としての安全性を求めるという側面の強いものだった。

一方で、インドや中東を中心とする宝飾品など実需は激減しており、10月末までの速報値でインドの金輸入は153トンとされている。前年同期は387トンとなっており半分以下の水準まで落ちているわけだ。ちなみに2008年は452トンだった。

実際に9月に1000ドルを超えてからの展開は、常に警戒感を伴った上昇となっている。いわゆる活況に「沸く」という状況にはない。また、警戒するばかりに上昇相場に乗り遅れた投資家が多く、下げ局面を待つのだが思う水準までは下がらず、時間の経過とともに買い値を切り上げるという展開になっている。先行した投資家は、利益確定の売りを断続的に出すのだが、それらはこの「出遅れ組」が拾うという展開になっている。

金融市場からの資金流入の裏にあるのは、ドルを中心にした低金利、カネ余りにある。ドル安を上昇のテコにしているのは「カネが余っている=通貨価値の劣化」だからこそ「基軸通貨ドルではなくゴールド(代替通貨)」という流れといえる。

昨年秋の欧米を中心とする金融危機の中で、資産としての認知が進んだ金。金市場が立ち上がって35年の中で、その通貨性に急速に光が当たり始めている。「国籍のない通貨」とも呼ばれる金が、その無国籍性ゆえに注目を集めるのは、グローバル化時代の金融危機ゆえのことだろう。そしてドルを中心とした管理通貨制度自体が曲がり角にきたことの証でもある。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。