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2009年10月07日

コペンハーゲンで考えた東京と五輪

Posted by: 伊賀大記

コペンハーゲンは石造りの建物が道沿いに並ぶヨーロッパらしい街並みだった。訪れた10月初旬は摂氏7度前後。太陽は真昼でも低く厳しい冬の訪れをうかがわせていたが、赤や緑など色鮮やかなオリンピックの看板や旗が所々に飾られ、実際の気温よりも暖かく感じられた。

2016年のオリンピック開催地を決めるIOC(国際オリンピック委員会)総会が開かれるというので、同市にはVIPに応援団、メディアなどが大挙襲来。港区と世田谷区を合わせた程度の面積に人口50万人強が住む街は、海外からの来客でにぎやかだった。

なかでも米国チームは、オバマ大統領夫妻がプレゼンテーションに出席することもあって抜きん出た大所帯で来訪。9つのホテルを借り切ったそうで、宿泊所はどこも満杯。あぶれたこちらは、洗面所にプラスチックの使い捨てコップふたつしかないホテルに170ドル(約1万5000円)も出して泊まらなくてはいけないはめになった。

オリンピック本番ではなく、開催地を決めるだけにもかかわらず、この大騒ぎ。五輪に巨額のマネーが動くようになったのと同時に、開催地決定も一大イベントと化したようだ。

東京都が五輪招致に使った費用は150億円と言われている。鳩山由紀夫首相も、政府専用機を飛ばして現地に駆けつけた。カネなしには招致がかなわないのが現実とはいえ、2016年の五輪開催を勝ち取ったリオデジャネイロ以外の都市や政府は、招致費用について、これから説明を求められることになりそうだ。

東京都はIOC総会の投票前に「Why Tokyo?(なぜ東京なのか?)」と題した会見を開いていたが、裏を返せば、なぜ東京でなくてはならないのかを簡単に伝えることは難しかったということだろう。環境を前面に出したが、スポーツと環境の結びつきもわかりにくかった。

リオのように「初めて」を売りにすることはもうできないのだから、東京の魅力を高め、東京でオリンピックを開いてみたいと関係者が思うような都市にすることが近道なのではないか。そこに環境への取り組みがあってもいい。そのためには築地市場の移転問題などをひとつひとつ解決していくことだろう。

2009年07月21日

「0円ビジネス」花盛り、明暗もくっきり

Posted by: 伊賀大記

不景気とあって消費者がモノやサービスを受け取るのにお金が要らない「0円ビジネス」が花盛りだ。喫茶店、コピー、デジカメのプリントなどなど、さまざまなアイデアビジネスが街に溢れている。ただ資金面を全て担うスポンサー企業にとっては相当なコスト負担となるため、事業を継続するのはたやすくない。マンガ雑誌、自動コーヒーマシーン、サンプル商品の提供などなど、これまでも、いろいろな「0円ビジネス」が現れては消えていった。

一方、しっかりと消費者とスポンサー企業を両方、満足させてビジネスを継続するケースもある。その違いは何か──。

「0円ビジネス」を資金面で支えるスポンサー企業の要求レベルは高い。何せ広告料金だけでなく、雑誌であれば編集者の給料・印刷代・配送費などすべて負担しなければならないのだ。少々、商品の売り上げが伸びた程度では満足してもらえない。「カネを払いたがらない客」にたくさん買ってもらうという、なかなか難しい命題を「0円ビジネス」は宿命として抱えている。

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(霞ヶ関にあるフリーカフェ「播磨屋ステーション」)

2007年1月に創刊した「コミック・ガンボ」は日本初の無料マンガ雑誌として鳴り物入りで登場したが、1年もたたずに休刊となった。有名漫画家などをそろえたが、スポンサーに対し高額なコストを上回るようなリターンを提供できなかったことが要因だとみられている。

一方、タダでもらえる雑誌で最も成功したのは「R25」だろう。25歳前後の男性を対象に50万部の発行部数を誇る。「とらばーゆ」「ホットペッパー」など0円雑誌の草分けである「リクルート」が手がけるだけあって2004年の創刊から4年以上も続いている。

マーケティングが専門であるMBA Solutionの安部徹也社長は、「0円ビジネスを成功させるには継続的に資金を出してくれるスポンサーを探すことができるといった組織力、営業力が欠かせない。リクルートは雑誌の配布方法などを含め長年の経験ノウハウを持っているのだろう」と話す。

ただ「R25」も創刊当初の発行部数60万部に対してはやや落ち気味であり、当初は発行日の木曜夕方にはすべて棚から消えていたが、最近では翌日以降も見かけるようになった。携帯電話サイト「R25式モバイル」が7月いっぱいで終了することになるなど、景気低迷が長引く中では必ずしも順風満帆とはいかないようだ。

東京の官庁が立ち並ぶ霞ヶ関にあるフリーカフェ「播磨屋ステーション」。播磨屋は兵庫県が本店のおかき・せんべいメーカーだ。フリーカフェではおかきやせんべいが10種類ほどタダで食べれるほか、コーヒーや紅茶、オレンジジュースなども自由に飲むことができる。

マーケティングには「返報性の原理」という法則がある。タダで商品やサービスを受けたら、そのままでは悪いという気持ちになり、何かお返ししようとする、という行動心理だ。

フリーカフェのなかには、店内には商品販売のコーナーがあり、気に入ったおかきやせんべいは、すぐにその場で購入できる。平日の夕方、フットサルができそうな広い店内には多くの女性客やサラリーマンが訪れており、販売コーナーで注文する客の姿も目立った。人間は、特に食べ物をもらうと、いわゆる「一宿一飯の恩義」を感じ、お返ししなくてはという気持ちが強く出やすいという。

「0円ビジネス」には消費者の心理をくすぐる、したたかな戦略も欠かせない。

2009年04月20日

どん欲の怪物「トン」を飼い慣らせ

Posted by: 伊賀大記

孔子の教えの中に「トン(けものへんに貪)」という想像上の怪物に関する寓話があるという。その巨大な怪物はおそろしく欲深で何でも食べる。食べ物はもちろん、建物や山や川といったものまで食べても満たされることはない。足るということを知らないのだ。やがて地球を食べ、宇宙を食べ、そして自らも食べてしまう。そして「無」だけが残る──という話だ。

金融バブルが崩壊しマネー資本主義への見直し機運が高まっている。暴走した「強欲(グリード)」が巨大なリスクを内包したマネーの膨張を生んだことへの反省だ。だが、確かに「強欲」は戒められるべきものとしても、カネを儲けたいという「欲」自体は資本主義や現代社会の大きな原動力になっていることも確かだろう。

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(写真は京都の龍安寺にあるつくばい。つくばいは蹲踞と書き、相撲ではそんきょと読む。自らの精神は「吾、唯、足るを知る」となりたいものだ。)

ガイトナー米財務長官が打ち出した官民共同ファンド(PPIP)による米金融機関の不良資産買い取り計画。

民間の出資者にとっては、わずかな資本出資で大きなレバレッジが効く一方、買い取り資産から大きな損失が発生した場合は政府が引き受けてくれる。このため金融機関やヘッジファンドがまたまた大儲けするシステムではないかとの批判が上がっている。

一方で、買い取りをすべて国の資金で行おうと思えば莫大な資金が必要であるし、その法案が議会を通過するかは不透明だとの指摘もある。時間とともに金融機関の資産は劣化しているとみられており金融問題解決は時間との勝負だ。さらに不良資産買い取りの焦点となるデューデリジェンスもしくは値付け作業(いくらで買うのか)は「複雑極まりなく民間金融機関の知識やノウハウが不可欠」(外資系投信ファンドマネージャー)という。

米連邦預金保険公社(FDIC)の元総裁であるウィリアム・アイザック氏が2月24日に米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した文が一部で話題になっている。題は「銀行国有化は答えではない」──。

米国は金融危機が強まった1984年にコンチネンタル・イリノイ銀行を国有化。不良資産の受け皿となったのがアイザック氏が総裁を勤めていたFDICだった。

FDICは、コンチネンタル・イリノイの経営陣や管理職を入れ替え、3年内に企業規模を半分に削減。米国7番目の銀行だったコンチネンタル・イリノイ銀行は7年後に民間に売却され、最後はバンク・オブ・アメリカに買収された。

アイザック氏は、現在の大手銀行が当時の規模とは比べられないほど巨大で複雑になり、「出口」時の買い手もみつからないとみて、現在の銀行国有化に疑問を呈したが、「企業を大きくしたい」という「欲」をすべて排除して政府主導で運営すれば、再生はとても難しいということも示唆している。

「欲」をうまく使いこなすことができるかどうか──。冒頭の貪欲の怪物「トン」も、うまく飼い慣らし、人類が出す膨大なゴミやCO2などを食べてくれるようにすれば、とても有益な怪物になったに違いない。

(写真/(c)Tomo.Yun