上がってきた稼働率、採算回復は?
経済産業省が発表している製造工業稼働率指数は、2月に60.5まで低下したが、最近の鉱工業生産の増加を反映し、7月時点では77.2まで持ち直してきた。同指数は日銀審議委員が判断材料として注目しており、今後の景気や金融政策を占う上での重要性が高まっている。
水野温氏日銀審議委員は8月20日の岡山での講演で「持続的な景気回復が実現するための前提条件は、海外需要の回復によって、生産が企業の採算ラインを継続的に上回るところまで増加することであると考えている」と発言。
須田美矢子委員は、9月9日の長崎講演の資料の中で、製造業の損益分岐点稼働率指数(営業利益ベース)が80.0近傍と推定されることを明らかにした。さらに「採算が回復するまで、なおしばらくの時間を要するとみられる」としている。
8月鉱工業生産は前月比1.9%増加した。三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミストの宅森昭吉氏は、8月の稼動率指数は78─79程度まで改善すると予測している。経済産業省は9月、10月の生産についてそれぞれ前月比1.1%、2.2%の増加を予想しているので、そのころには稼働率指数の80超えがいよいよ展望できそうだ。
10─12月期についても、日銀は9月金融経済月報で「増加が続くと予想されている」としており、損益分岐点稼働率を上回る状況が続きそうだ。そうした状況が継続すれば、完全に冷え切っている設備投資にもプラス材料となる。
しかし、宅森氏は「まだ設備投資が動き出す水準ではない」と慎重だ。同氏の試算によると、設備投資が動き出すには稼働率指数が少なくとも97程度まで上昇する必要があるという。
また、稼働率が高まっても、それが中長期的に維持できるかは依然不透明だ。日本を含む各国の対策が、生産・稼働率の押し上げに貢献してきたが、こうした政策効果も、年明け後は徐々に弱まってくるとみられる。
日本経済の55%を占める民間消費についても、雇用・所得環境の改善が見られず、この先の早急な持ち直しも見込みにくい。日本経済の改善を示すデータは徐々に増えつつあるが、民需主導の自律的回復への道は平坦ではない。
(写真/ロイター)



