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2009年11月19日

古くて新しい中小企業の金融問題

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

kumano第一生命経済研究所 主席エコノミスト 熊野 英生

「中小企業金融円滑化法」が、臨時国会に提出されている。貸し渋り問題に注目が集まって見逃されがちなだが、現在の日本には中小企業へのリスクマネー供給の課題がある。

簡単に言えば、ベンチャーなどを対象に将来、高成長が見込めそうな先にリスクマネーを仲介する金融機能の開拓である。日本経済に足りないのは、イノベーションを巻き起こすような事業者の試みに対するリスクマネー支援であろう。

ところが、銀行は長引く構造不況で自己資本の余力をすり減らし、思い切ってリスクが取れなくなった。この課題は、もう十数年来、議論されてきていまだに有益な処方せんが確立されていない。

リスクマネーの問題には、いくつかの歴史的変遷がある。1999年は株式市場に新興市場が創設され、2006年までは新規公開(IPO)の企業に人気が集まった。しかし、熱気は新興市場の株価が軟調になってくると、急速に冷めてしまった。新興市場は深い低迷状態から抜け出せない。

このIPO市場の停滞に絡んで、ベンチャーキャピタルのファイナンスにも悪影響を与えている。有望な企業を探し出して、将来のIPOに向けて支援をするベンチャーキャピタルは、新しいビジネスチャンスの「ゆりかご」的な存在である。彼らが、ベンチャーの成長支援ビジネスをうまくやっていけるのは、事業の川下にIPO市場があって、そこを出口(Exit)とすることで、高収益を得られるという新興市場との共生構造があったからだ。

新興市場が停滞することは、ベンチャーキャピタルの採算性を低下させる。

もう1つの流れとして、中小企業向けの融資を担保によることなく、個別の中小企業を簡単な書類審査で融資するタイプのビジネスローンの試みがあった。大手銀行では2004年あたりから、こうしたビジネスローンを次々に導入していった。2006年3月末ではメガバンク3行で5兆円に達したとされる。

しかし、多くの銀行がビジネスローンを一斉に手がけると、銀行側にも競争圧力が生まれて、大規模な資金がこの市場に流れ込んで、意図した採算性が確保できなくなってしまった。

実は、ベンチャー企業でも、事業運営を助けるために金融機関から人材が送り込まれてきて、それを通じて経営体質の改善が進められ、事業採算が高まるケースが少なくない。これは、昔ながらの銀行や中小企業金融機関と取引先の関係に戻っている流れとも言える。

ベンチャーキャピタルでも、単に多産多死型のビジネスチャンスを大量に寄せ集めて、大数の法則を使って管理しているのではなく、まずは良い企業を見抜き、さらにそこに経営改善の援助を行うような地道な活動を行っている。

以上のように、リスクマネーを供給するという課題は、過去からの挫折と取り組みの経緯がある。将来の産業発展のために中小企業は、ビッグビジネスに飛躍していけるような金融の仕組みをしっかり整備することが重要である。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年11月17日

高まる無国籍通貨「ゴールド」への関心

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

亀井幸一郎 マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 金属・貴金属アナリスト

金価格の上昇が続いている。今回の特徴は、静かな上値追いという点にある。

それでは、なぜこうした相場展開となっているのだろうか。年始以降、ここに至る金価格の上昇は、投資需要の記録的な増加によってもたらされてきた。1─3月期に見られた大手ヘッジファンドによる金ETFの集中買いに始まり、その後は世界的なスクラップ(金製品の売り戻し)のこれまた集中的な売りを継続的な投資マネーの流入が吸収するという経過をたどってきた。

その間にNYコメックスでは、ファンドによるネットの買い建て玉(ネット・ロング)が重量換算にして概ね500─600トンという高水準を維持してきた。先物市場での600トン近いネット・ロングは、これだけの規模の将来の売り要因を抱えていることを意味し、過去の経験則では内部要因からみて、これだけで十分な反落要因といえる規模である。

ところが、今回9月に至る価格展開は、この高水準のネットロングを抱えながら、比較的安定した900ドル台前半でのレンジ相場を繰り返してきた。既にこの段階で、従来相場との質的な違いを示していたのである。

投資需要急増の背景は、米国の金融政策とそれを映すドル安見通しである。米連邦準備理事会(FRB)によるゼロ金利政策と超ド級の量的緩和策、オバマ政権が採った史上最大の財政出動策を受け、過去最大に膨れ上がった財政赤字は、今後複数年にわたり記録的水準を続けるとみられる。

昨年秋のリーマン・ショック後に高まった信用リスクのない金への見直しの動きは、機関投資家のみならず個人富裕層を巻き込んだ大きな流れになっているのだが、それは投資対象としての安全性を求めるという側面の強いものだった。

一方で、インドや中東を中心とする宝飾品など実需は激減しており、10月末までの速報値でインドの金輸入は153トンとされている。前年同期は387トンとなっており半分以下の水準まで落ちているわけだ。ちなみに2008年は452トンだった。

実際に9月に1000ドルを超えてからの展開は、常に警戒感を伴った上昇となっている。いわゆる活況に「沸く」という状況にはない。また、警戒するばかりに上昇相場に乗り遅れた投資家が多く、下げ局面を待つのだが思う水準までは下がらず、時間の経過とともに買い値を切り上げるという展開になっている。先行した投資家は、利益確定の売りを断続的に出すのだが、それらはこの「出遅れ組」が拾うという展開になっている。

金融市場からの資金流入の裏にあるのは、ドルを中心にした低金利、カネ余りにある。ドル安を上昇のテコにしているのは「カネが余っている=通貨価値の劣化」だからこそ「基軸通貨ドルではなくゴールド(代替通貨)」という流れといえる。

昨年秋の欧米を中心とする金融危機の中で、資産としての認知が進んだ金。金市場が立ち上がって35年の中で、その通貨性に急速に光が当たり始めている。「国籍のない通貨」とも呼ばれる金が、その無国籍性ゆえに注目を集めるのは、グローバル化時代の金融危機ゆえのことだろう。そしてドルを中心とした管理通貨制度自体が曲がり角にきたことの証でもある。

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*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年11月12日

絶好調・豪経済の秘密

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

双日豪州会社 経理マネジャー 唐原 研

オーストラリア準備銀行(RBA)は、10月6日と11月3日に利上げした。初回の利上げはリーマンショック以来、先進国では初めてだった。先進国の中で、いち早くオーストラリア経済が回復軌道に乗り始めた理由は何なのか。

景気拡大を支えてきたのは、石炭、鉄鉱石、石油、ボーキサイトなどの豊富な天然資源である。特に金融危機直前には、資源ブームによる価格高騰や急速な経済成長を遂げる中国の資源需要増加により、資源輸出は価格、数量ともに大幅に伸びていた。この堅調な経済に対し、金融危機の与えた影響は一過性で、早期の回復に至ったという見方もある。

また、ラッド政権による金融危機対応に対し高い評価がある。その柱となったのが財政支出と金利引き下げである。財政支出では、個人への給付金、住宅取得支援、各種インフラ整備、中小企業の設備投資への減税といった景気刺激策が早い段階で発表された。

一方、政策金利は金融危機直前には7.25%であったが、2008年9月以降の6回のRBA理事会で利下げを決め、2009年4月の理事会では3.00%まで引き下げられていた。

金融危機以前の半分以下の水準になったとはいえ、元々の金利率が高かったことで、引き下げられる余地が大きく、さらに相対的に高いレートを底として据え置く事が可能だったことも、他の先進国と比べてマクロ政策上のフリーハンドの幅が大きかったと言えよう。

さらに、暮らしの中で筆者が肌で感じる部分として、オーストラリア人の国民性を挙げたい。細かい事にとらわれないおおらかな気質、人々がよく口にするオーストラリア英語の「No worries(気にするな)」の精神が、景気回復に影響を与えたと思えてならないのである。

金融危機後も、昼食時になれば、高級レストランはワインのボトルを空けながら、相変わらずのんびりとランチを楽しむオージーたちであふれていた。知人たちが長期の休暇を取って、アメリカやヨーロッパ、あるいは日本へと旅行に出掛けて行くひん度も、全く減ったように感じられなかった。

オーストラリアは、世界でも有数の持ち家率の高い国であり、この比率は過去40年間安定して7割程度だと言われている。最近の調査によると、持ち家所有者のうちの3分の2以上が、ローンで住宅を購入している。

このような状況下では、当然、7.25%から3.00%への政策金利引下げがローン債務者にとって大きな金利負担軽減をもたらし、可処分所得の増加を生じさせるので、非常に有効な景気刺激策であったことは言うまでもない。

RBAは、インフレを適正な水準に維持することを目的として、金利を次第に通常の設定に戻すべきとしており、先物市場では2010年11月までに5%程度に引き上げられるとの見方が強い。

この金利上昇が、ローン金利負担の上昇などにより国民の消費マインドを変えていき、少なからず景気回復に影響を与えるのか、あるいは相変わらずの「No worries」の気質により、国民の生活パターンは特に変わらず、大きく消費が落ち込む事もないのか。今後の動向を興味深く見守っていきたい。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。