ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

‘世界経済’のアーカイブ;カテゴリー

2009年11月12日

絶好調・豪経済の秘密

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

双日豪州会社 経理マネジャー 唐原 研

オーストラリア準備銀行(RBA)は、10月6日と11月3日に利上げした。初回の利上げはリーマンショック以来、先進国では初めてだった。先進国の中で、いち早くオーストラリア経済が回復軌道に乗り始めた理由は何なのか。

景気拡大を支えてきたのは、石炭、鉄鉱石、石油、ボーキサイトなどの豊富な天然資源である。特に金融危機直前には、資源ブームによる価格高騰や急速な経済成長を遂げる中国の資源需要増加により、資源輸出は価格、数量ともに大幅に伸びていた。この堅調な経済に対し、金融危機の与えた影響は一過性で、早期の回復に至ったという見方もある。

また、ラッド政権による金融危機対応に対し高い評価がある。その柱となったのが財政支出と金利引き下げである。財政支出では、個人への給付金、住宅取得支援、各種インフラ整備、中小企業の設備投資への減税といった景気刺激策が早い段階で発表された。

一方、政策金利は金融危機直前には7.25%であったが、2008年9月以降の6回のRBA理事会で利下げを決め、2009年4月の理事会では3.00%まで引き下げられていた。

金融危機以前の半分以下の水準になったとはいえ、元々の金利率が高かったことで、引き下げられる余地が大きく、さらに相対的に高いレートを底として据え置く事が可能だったことも、他の先進国と比べてマクロ政策上のフリーハンドの幅が大きかったと言えよう。

さらに、暮らしの中で筆者が肌で感じる部分として、オーストラリア人の国民性を挙げたい。細かい事にとらわれないおおらかな気質、人々がよく口にするオーストラリア英語の「No worries(気にするな)」の精神が、景気回復に影響を与えたと思えてならないのである。

金融危機後も、昼食時になれば、高級レストランはワインのボトルを空けながら、相変わらずのんびりとランチを楽しむオージーたちであふれていた。知人たちが長期の休暇を取って、アメリカやヨーロッパ、あるいは日本へと旅行に出掛けて行くひん度も、全く減ったように感じられなかった。

オーストラリアは、世界でも有数の持ち家率の高い国であり、この比率は過去40年間安定して7割程度だと言われている。最近の調査によると、持ち家所有者のうちの3分の2以上が、ローンで住宅を購入している。

このような状況下では、当然、7.25%から3.00%への政策金利引下げがローン債務者にとって大きな金利負担軽減をもたらし、可処分所得の増加を生じさせるので、非常に有効な景気刺激策であったことは言うまでもない。

RBAは、インフレを適正な水準に維持することを目的として、金利を次第に通常の設定に戻すべきとしており、先物市場では2010年11月までに5%程度に引き上げられるとの見方が強い。

この金利上昇が、ローン金利負担の上昇などにより国民の消費マインドを変えていき、少なからず景気回復に影響を与えるのか、あるいは相変わらずの「No worries」の気質により、国民の生活パターンは特に変わらず、大きく消費が落ち込む事もないのか。今後の動向を興味深く見守っていきたい。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年11月11日

米国のナローパス

Posted by: 田巻一彦

JAPAN-ECONOMY/FUJIIガイトナー米財務長官が10日に来日し、藤井裕久財務相と会談。きょう11日には鳩山由紀夫首相、菅直人副総理兼国家戦略担当相、白川方明日銀総裁らと会談し、シンガポールへと飛び立った。

日米財務相会談では「ドルを強くしたいとのガイトナー長官の意思を再確認した」と藤井財務相は記者団に語った。

だが、米国は世界経済の不均衡是正に向けた政策協調を目指している。

国際金融に精通したある関係者は「リーマンショック後の政策対応で、財政赤字が急拡大している米国にとって、これ以上、財政に負担はかけられない。米国の目指しているのは、ドル安による輸出拡大を手段にした経済成長だろう」と指摘する。

実際、リーマンショック後の危機に対応するために、米連邦準備理事会(FRB)の取った信用緩和政策で、ドルの流通量が急増し「このまま黙っていても、ドルは自然に下がるような状況になってきた」(邦銀関係者)と、多くの市場関係者から見られるようになった。

米当局が望んでいるのは「ゆっくりしたドル安」だと見られるが、当局がドル安を望んでいると市場に悟られた途端、急落の道を転げ落ちるのが相場の常だ。

この3カ月の間でも、ユーロが対ドルで急上昇し、ドルが全面安に突入して、その後に崩落する展開を想像させるような場面もあった。

ドルが急落すれば、米国債の買い手がいなくなり、米経常赤字をファイナンスできないという「最悪の事態」も、単なる空想とは言えなくなる。

「強いドル」を米当局は志向していると、言い続ける理由がそこにありそうだ。ガイトナー長官は11日、日本の報道陣に対し、米経済にとって強いドルの維持は重要であると繰り返した

米国の金融事情に詳しいある市場関係者は「ドルは急落せず、ゆっくり下がってほしいというのが米国の本音だろうが、そのことが明らかになった瞬間にドルは暴落するだろう。難しいサジ加減を強いられている」と話す。

オバマ大統領は、ロイターとの単独インタビューで、来週の訪中時には、人民元問題を議題として提起する方針を示している。

しかし、問題は人民元の切り上げだけでなく、ドルの問題だという点に世界の目は、集まりつつある。

急落しない程度にドルを下げるという作戦があるならば、その道は「ナローパス」(細い道)であり、ちょっとした横風で細い尾根道から転落しかねないリスクを抱えているのではないだろうか。

(写真/ロイター)

2009年11月02日

白川総裁が指摘した経済現象 

Posted by: 田巻一彦

USA-FED/10月30日の日銀金融政策決定会合やその後の白川方明総裁の会見で、国内外のメディアの多くはCPや社債を対象にしたオペの打ち切りや、デフレと超金融緩和策の長期化の見通しに多く言及したが、ロイターの速報以外では全く触れられていない部分があった。

白川総裁は、世界経済の先行きに関する質問に答えた中で「先進国の金融緩和で供給された資金やリスクテークの能力が、(中略)新興国の経済を押し上げている」「したがって先進国と新興国を結ぶ1つの大きなリンクは、先進国の金融緩和が、染み出したという言葉がいいのか悪いのかわからないが、影響していることだと思う」と指摘した。

先進国の金融緩和が、新興国の経済上振れに影響を与えているとの指摘だ。

同じような質問に対し、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、10月19日に米カリフォルニア州のサンタバーバラで、先進国の金融緩和効果が新興国に波及したかどうかには言及せず、アジアで発生する可能性のある資産バブルについて懸念を表明。過剰な貯蓄を抑制し、消費を促進するべきであると述べていた。

他の中銀首脳も、この問題のメカニズムに関し、明確に指摘したことは、今までのところない。

一国の金融政策が、マネーのグローバル化に伴って、その効果が自国内で出ないうちに海外で、その当局の想定とは異なって影響が出る可能性があるとの見方は「一部の当局者の中で、水面下で認識されている」(国際金融筋)という。

その認識をさらに推し進めていけば、各国ごとに中銀が別々の金融政策を取った場合、政策効果が意図しない場所で、意図しない形で出てくるという指摘も、国際金融を専門に見ている人たちの中では、問題として意識され始めている。

しかし、この問題を解決するような新しいシステムを構築しようとの動きは全くなく、今週末に開催されるG20でも、そうした視点にたったアクションが取られる可能性は今のところゼロだ。

だが、白川総裁が率直に指摘したように、米、欧、日など先進国の中銀が実施した金融の超緩和策の効果が「染み出し」というかたちで新興国に出てきたことは、間違いないだろう。この現象を正直に認め、先行きのマクロ政策を議論することはできないのだろうか。

白川総裁の指摘が、主要な中銀やG20などの場で、積極的に議論されるような展開を望みたいが、現実離れとのおしかりを受けるだろうか。

(写真/ロイター)