絶好調・豪経済の秘密
*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。
双日豪州会社 経理マネジャー 唐原 研
オーストラリア準備銀行(RBA)は、10月6日と11月3日に利上げした。初回の利上げはリーマンショック以来、先進国では初めてだった。先進国の中で、いち早くオーストラリア経済が回復軌道に乗り始めた理由は何なのか。
景気拡大を支えてきたのは、石炭、鉄鉱石、石油、ボーキサイトなどの豊富な天然資源である。特に金融危機直前には、資源ブームによる価格高騰や急速な経済成長を遂げる中国の資源需要増加により、資源輸出は価格、数量ともに大幅に伸びていた。この堅調な経済に対し、金融危機の与えた影響は一過性で、早期の回復に至ったという見方もある。
また、ラッド政権による金融危機対応に対し高い評価がある。その柱となったのが財政支出と金利引き下げである。財政支出では、個人への給付金、住宅取得支援、各種インフラ整備、中小企業の設備投資への減税といった景気刺激策が早い段階で発表された。
一方、政策金利は金融危機直前には7.25%であったが、2008年9月以降の6回のRBA理事会で利下げを決め、2009年4月の理事会では3.00%まで引き下げられていた。
金融危機以前の半分以下の水準になったとはいえ、元々の金利率が高かったことで、引き下げられる余地が大きく、さらに相対的に高いレートを底として据え置く事が可能だったことも、他の先進国と比べてマクロ政策上のフリーハンドの幅が大きかったと言えよう。
さらに、暮らしの中で筆者が肌で感じる部分として、オーストラリア人の国民性を挙げたい。細かい事にとらわれないおおらかな気質、人々がよく口にするオーストラリア英語の「No worries(気にするな)」の精神が、景気回復に影響を与えたと思えてならないのである。
金融危機後も、昼食時になれば、高級レストランはワインのボトルを空けながら、相変わらずのんびりとランチを楽しむオージーたちであふれていた。知人たちが長期の休暇を取って、アメリカやヨーロッパ、あるいは日本へと旅行に出掛けて行くひん度も、全く減ったように感じられなかった。
オーストラリアは、世界でも有数の持ち家率の高い国であり、この比率は過去40年間安定して7割程度だと言われている。最近の調査によると、持ち家所有者のうちの3分の2以上が、ローンで住宅を購入している。
このような状況下では、当然、7.25%から3.00%への政策金利引下げがローン債務者にとって大きな金利負担軽減をもたらし、可処分所得の増加を生じさせるので、非常に有効な景気刺激策であったことは言うまでもない。
RBAは、インフレを適正な水準に維持することを目的として、金利を次第に通常の設定に戻すべきとしており、先物市場では2010年11月までに5%程度に引き上げられるとの見方が強い。
この金利上昇が、ローン金利負担の上昇などにより国民の消費マインドを変えていき、少なからず景気回復に影響を与えるのか、あるいは相変わらずの「No worries」の気質により、国民の生活パターンは特に変わらず、大きく消費が落ち込む事もないのか。今後の動向を興味深く見守っていきたい。
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