金融機関の報酬制限と流動性規制
世界の金融機関の今年のボーナス(賞与)は、前年比で平均40%増と大きく回復する見通しだという。2008年の落ち込み幅が大きかったため、賞与水準自体は危機以前の水準を回復してはいないというが、商品や高利回り債券の担当者は前年比で50%増のケースもあるという。
トレーディング部門以外でも、経営再建中の米大手銀シティグループの最高財務責任者ら幹部3人が現金と株式で3億円を超えるボーナスを受け取る予定など、景気の良い話が多い。
欧州の監督当局は「危機の最中に税金で支援を受けたのにもかかわらず、非難されるべき慣行が復活していることに、国民は大きなショックを受けている」(英独仏首脳の共同声明)と、金融機関の高額報酬に眉をひそめ、報酬制限導入で足並みがそろっているが、報酬制限との関連で注目されるのが、金融機関の流動性規制に向けた世界の監督当局の動きだ。
英金融サービス機構(FSA)のターナー長官は「英国の金融機関はボーナスの内訳を報告する義務があり、報告しない場合には余剰資金を内部留保に回すべき」と提案した。
今回の金融危機では、短期金融市場の機能不全の前に、短期債務に依存した欧米金融機関のビジネスモデルが立ち行かなくなった。資金繰り不安に陥った大手金融機関は公的資金注入を受けたほか、政府保証付きの債券発行で急場を凌いだ。
この反省に立ち、英FSAは10月に流動性基準強化試案を発表。金融機関に徹底的な流動性リスク管理を求めている。
英FSA案は、金融機関に安定的な長期資金の調達を促す一方で、短期債務の圧縮を求め、その残高については資金繰り悪化に備えて十分な適格資産(国債、当座預金、国際機関債)の保有を求める。 金融機関にとっては、確実にコスト増となる。
金融界では「FSAの規制は投資銀行業務を全否定するもの」(欧州銀)との反発や「今後は、各々の銀行が巨額のファンディング・リスクを背負って利益を最大化させるというビジネスモデルは立ち行かなくなるだろう」(在京外銀のマネージャー)との意見が聞かれる。
英金融街シティでは保守党政権の復権とFSA案の消滅を期待する向きもあるが、欧州では英国と同様の規制をフランスが導入予定のほか、EUも資本強化ディレクティブ(CRD3)を発表し、20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)では流動性強化の議論が進んでいる。
高額報酬の一方で、後退を余儀なくされる投資銀行業。全ての規制には抜け道があるというが、短期金融市場では既に規制の影響が出始め、長めの資金の調達ニーズが上がってきている。
(写真/ロイター)

