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2009年11月25日

金融機関の報酬制限と流動性規制

Posted by: 森佳子

世界の金融機関の今年のボーナス(賞与)は、前年比で平均40%大きく回復する見通しだという。2008年の落ち込み幅が大きかったため、賞与水準自体は危機以前の水準を回復してはいないというが、商品や高利回り債券の担当者は前年比で50%増のケースもあるという。

トレーディング部門以外でも、経営再建中の米大手銀シティグループの最高財務責任者ら幹部3人が現金と株式で3億円を超えるボーナスを受け取る予定など、景気の良い話が多い。

欧州の監督当局は「危機の最中に税金で支援を受けたのにもかかわらず、非難されるべき慣行が復活していることに、国民は大きなショックを受けている」(英独仏首脳の共同声明)と、金融機関の高額報酬に眉をひそめ、報酬制限導入で足並みがそろっているが、報酬制限との関連で注目されるのが、金融機関の流動性規制に向けた世界の監督当局の動きだ。

英金融サービス機構(FSA)のターナー長官は「英国の金融機関はボーナスの内訳を報告する義務があり、報告しない場合には余剰資金を内部留保に回すべき」と提案した。

今回の金融危機では、短期金融市場の機能不全の前に、短期債務に依存した欧米金融機関のビジネスモデルが立ち行かなくなった。資金繰り不安に陥った大手金融機関は公的資金注入を受けたほか、政府保証付きの債券発行で急場を凌いだ。

この反省に立ち、英FSAは10月に流動性基準強化試案を発表。金融機関に徹底的な流動性リスク管理を求めている。

英FSA案は、金融機関に安定的な長期資金の調達を促す一方で、短期債務の圧縮を求め、その残高については資金繰り悪化に備えて十分な適格資産(国債、当座預金、国際機関)の保有を求める。 金融機関にとっては、確実にコスト増となる。

金融界では「FSAの規制は投資銀行業務を全否定するもの」(欧州銀)との反発や「今後は、各々の銀行が巨額のファンディング・リスクを背負って利益を最大化させるというビジネスモデルは立ち行かなくなるだろう」(在京外銀のマネージャー)との意見が聞かれる。

英金融街シティでは保守党政権の復権とFSA案の消滅を期待する向きもあるが、欧州では英国と同様の規制をフランスが導入予定のほか、EUも資本強化ディレクティブ(CRD3)を発表し、20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)では流動性強化の議論が進んでいる。

高額報酬の一方で、後退を余儀なくされる投資銀行業。全ての規制には抜け道があるというが、短期金融市場では既に規制の影響が出始め、長めの資金の調達ニーズが上がってきている。

(写真/ロイター)

2009年11月18日

見えない米利上げ時期

Posted by: 田巻一彦

G20/バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が16日、現在の超金融緩和政策を長期間継続するとあらためて述べたことで、外為市場ではドル・キャリートレードが活発化してきた。

米市場では、ついこの間まで「出口が近いのではないか」との思惑が台頭していたが、マーケットセンチメントは様変わりだ。

私は10月15日の投稿で、コーンFRB副議長の発言を引用しながら、米国でも超金融緩和の出口政策発動は、かなり先になる可能性を指摘した。

FRBがその後に発信してきたメッセージは、ほぼその通りだった。16日のバーナンキ議長の発言の中にも「FRBは雇用の伸びと物価安定の双方にコミットしている」と述べた。出口がいつかを予想する上で、この発言が大きなポイントになりそうだ。

つまり、上昇を続けて10%台に乗せた失業率がどこで頭を打つかが1つの課題だが、9-10%台でウロウロしている段階では「雇用の伸び」にコミットしているFRBが、利上げ方向に動くの難しいと見るべきだろう。

現在の米市場は、来年秋ごろの利上げを見込んでいるが、その時までに米雇用情勢の改善が明確になっている保証はない。厳しい雇用情勢を反映して個人消費が振るわない状況が継続すれば、来年いっぱいの政策金利据え置きの可能性もかなり高いのではないか。

もう1つ、米市場が余り注目していない点がある。それは米金融システムの復活度合いだ。米銀の多くは、確かに公的資金を返済し、正常化に向かっているように見える。しかし、肝心の貸し出しは、全く伸びていない。金融仲介機能は不全状態が継続している。

「資金需要がないからだ」と、どこかの国でのできごとのような反論が出てくるかもしれないが、資本市場での資金調達の回復ぶりなどをみれば、そうではないと言えると思う。

米市場関係者の多くは否定的だが、金融機能不全と実体経済の低迷が絡み合いながら、低成長が継続するという日本の「失われた15年」と似た状況が現出するのではないかと思えてならない。

(写真/ロイター)

2009年11月12日

絶好調・豪経済の秘密

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

双日豪州会社 経理マネジャー 唐原 研

オーストラリア準備銀行(RBA)は、10月6日と11月3日に利上げした。初回の利上げはリーマンショック以来、先進国では初めてだった。先進国の中で、いち早くオーストラリア経済が回復軌道に乗り始めた理由は何なのか。

景気拡大を支えてきたのは、石炭、鉄鉱石、石油、ボーキサイトなどの豊富な天然資源である。特に金融危機直前には、資源ブームによる価格高騰や急速な経済成長を遂げる中国の資源需要増加により、資源輸出は価格、数量ともに大幅に伸びていた。この堅調な経済に対し、金融危機の与えた影響は一過性で、早期の回復に至ったという見方もある。

また、ラッド政権による金融危機対応に対し高い評価がある。その柱となったのが財政支出と金利引き下げである。財政支出では、個人への給付金、住宅取得支援、各種インフラ整備、中小企業の設備投資への減税といった景気刺激策が早い段階で発表された。

一方、政策金利は金融危機直前には7.25%であったが、2008年9月以降の6回のRBA理事会で利下げを決め、2009年4月の理事会では3.00%まで引き下げられていた。

金融危機以前の半分以下の水準になったとはいえ、元々の金利率が高かったことで、引き下げられる余地が大きく、さらに相対的に高いレートを底として据え置く事が可能だったことも、他の先進国と比べてマクロ政策上のフリーハンドの幅が大きかったと言えよう。

さらに、暮らしの中で筆者が肌で感じる部分として、オーストラリア人の国民性を挙げたい。細かい事にとらわれないおおらかな気質、人々がよく口にするオーストラリア英語の「No worries(気にするな)」の精神が、景気回復に影響を与えたと思えてならないのである。

金融危機後も、昼食時になれば、高級レストランはワインのボトルを空けながら、相変わらずのんびりとランチを楽しむオージーたちであふれていた。知人たちが長期の休暇を取って、アメリカやヨーロッパ、あるいは日本へと旅行に出掛けて行くひん度も、全く減ったように感じられなかった。

オーストラリアは、世界でも有数の持ち家率の高い国であり、この比率は過去40年間安定して7割程度だと言われている。最近の調査によると、持ち家所有者のうちの3分の2以上が、ローンで住宅を購入している。

このような状況下では、当然、7.25%から3.00%への政策金利引下げがローン債務者にとって大きな金利負担軽減をもたらし、可処分所得の増加を生じさせるので、非常に有効な景気刺激策であったことは言うまでもない。

RBAは、インフレを適正な水準に維持することを目的として、金利を次第に通常の設定に戻すべきとしており、先物市場では2010年11月までに5%程度に引き上げられるとの見方が強い。

この金利上昇が、ローン金利負担の上昇などにより国民の消費マインドを変えていき、少なからず景気回復に影響を与えるのか、あるいは相変わらずの「No worries」の気質により、国民の生活パターンは特に変わらず、大きく消費が落ち込む事もないのか。今後の動向を興味深く見守っていきたい。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。