デフレとインフレ、現実的脅威は?
米連邦準備理事会(FRB)の中で、この先の経済情勢と金融政策のスタンスをめぐり、微妙ながら根本的な見解の相違が見えつつある。その核にあるのは、「デフレとインフレのどちらに対応するべきか」という問題だ。
コーンFRB副議長は13日のセントルイスでの講演で「基調的なインフレ率は当面、一段と低下するリスクの方が上昇するリスクより大きいとみている」と語った。
ダドリーニューヨーク連銀総裁は5日の講演で、FF金利は長期わたり異例の低水準にとどまる公算が大きいとの見解を示し、日銀流の「時間軸」をマーケットに意識させる発言で注目を集めた。
一方、リッチモンド連銀のラッカー総裁は1日、ラジオインタビューの中で、失業率が低下し始める前にFRBは金融引き締めに着手する可能性があるとの見解を示していた。また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は11日、インフレリスクを過小評価するべきでないとの見解を示していた。
この見解の対立には、根深い考え方の相違がありそうだ。リーマン・ショック後の消費の大幅な減少を受け、米国内の供給力は需要を大幅に上回る需給ギャップが生じることになった。その結果、物価には低下圧力がかかり、コーン副議長に代表される見解が出るにいたった。
他方で、クレジット市場をはじめとするマーケット機能を復活させるため、FRBは大量の金融資産を購入し、マネーを市場に大量に供給した。この余剰マネーのうねりが中期的にインフレになるリスクを増大させているというのが、インフレ警戒論の論拠だろう。
さらに事態を複雑化させているのは、このマネーは米国からだけではなく、欧州や日本からもばらまかれ、グローバルに駆けめぐっているという今日的な事態に直面していることだ。
米市場では、根本的な信用の回復が実現していないため、貸し出しが増える兆候はなく、あまったマネーがバブルを生む気配は今のところない。しかし、豪州や南アフリカ、ブラジルなどの通貨やその他の資産はどんどん値上がりし、バブルが明らかに膨らみ始めている。
たぶん、米国でインフレになることはなく、FRB主流派の意見が通って、超緩和政策は米国でも長期化する可能性があるとみている。そうなると世界のどこかでバブルが爆発するリスクが増大する。別の国のバブルを抑制するために、米国が引き締めに転じることはないだろう。
この2世紀にわたって定着してきた感がある国ごとの金融政策が、うまく機能しなくなっているように思うが、別の仕組みを考える動きは、世界の当局者からまったく聞こえてこない。新たなバブル崩壊がこの先、数年後に起きたらかなりの混乱に直面すると思うが、よい対応策はないだろうか。
(写真/ロイター)

日銀の白川方明総裁は14日の会見で、
