ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年10月23日

デフレとインフレ、現実的脅威は?

Posted by: 田巻一彦

USA/米連邦準備理事会(FRB)の中で、この先の経済情勢と金融政策のスタンスをめぐり、微妙ながら根本的な見解の相違が見えつつある。その核にあるのは、「デフレとインフレのどちらに対応するべきか」という問題だ。

コーンFRB副議長は13日のセントルイスでの講演で「基調的なインフレ率は当面、一段と低下するリスクの方が上昇するリスクより大きいとみている」と語った。

ダドリーニューヨーク連銀総裁は5日の講演で、FF金利は長期わたり異例の低水準にとどまる公算が大きいとの見解を示し、日銀流の「時間軸」をマーケットに意識させる発言で注目を集めた。

一方、リッチモンド連銀のラッカー総裁は1日、ラジオインタビューの中で、失業率が低下し始める前にFRBは金融引き締めに着手する可能性があるとの見解を示していた。また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は11日、インフレリスクを過小評価するべきでないとの見解を示していた。

この見解の対立には、根深い考え方の相違がありそうだ。リーマン・ショック後の消費の大幅な減少を受け、米国内の供給力は需要を大幅に上回る需給ギャップが生じることになった。その結果、物価には低下圧力がかかり、コーン副議長に代表される見解が出るにいたった。

他方で、クレジット市場をはじめとするマーケット機能を復活させるため、FRBは大量の金融資産を購入し、マネーを市場に大量に供給した。この余剰マネーのうねりが中期的にインフレになるリスクを増大させているというのが、インフレ警戒論の論拠だろう。

さらに事態を複雑化させているのは、このマネーは米国からだけではなく、欧州や日本からもばらまかれ、グローバルに駆けめぐっているという今日的な事態に直面していることだ。

米市場では、根本的な信用の回復が実現していないため、貸し出しが増える兆候はなく、あまったマネーがバブルを生む気配は今のところない。しかし、豪州や南アフリカ、ブラジルなどの通貨やその他の資産はどんどん値上がりし、バブルが明らかに膨らみ始めている。

たぶん、米国でインフレになることはなく、FRB主流派の意見が通って、超緩和政策は米国でも長期化する可能性があるとみている。そうなると世界のどこかでバブルが爆発するリスクが増大する。別の国のバブルを抑制するために、米国が引き締めに転じることはないだろう。

この2世紀にわたって定着してきた感がある国ごとの金融政策が、うまく機能しなくなっているように思うが、別の仕組みを考える動きは、世界の当局者からまったく聞こえてこない。新たなバブル崩壊がこの先、数年後に起きたらかなりの混乱に直面すると思うが、よい対応策はないだろうか。

(写真/ロイター)

2009年10月15日

日米とも遠そうな利上げへの道

Posted by: 田巻一彦

JAPAN-ECONOMY/日銀の白川方明総裁は14日の会見で、物価下落が原因となる景気悪化の可能性を注意していく、との見解を表明した。

時限措置の取り扱いにかかわらず、超低金利を維持していくスタンスを鮮明にしており、超緩和策が長期化する弊害への言及は目立たなかった印象だ。

日銀は足元の国内経済が、デフレに陥っているという認識には至っていない。そうした中での白川総裁の発言である。日銀が下方向へのリスクに敏感になっていると受け取ってもいいのではないか。

実際、国内のGDPギャップは、最近の生産回復基調をもってしても、依然としてかなりの規模になっているもようだ。このことは国内物価の下押し圧力が小さくなっていないことを意味し、悪い物価下落になる兆しが出始めているのではないかとの疑念も出てくる要素になる。

一方、コーン米連邦準備理事会(FRB)副議長は、13日のセントルイスでの講演で「基調的なインフレ率は当面、一段と低下するリスクの方が上昇するリスクより大きいとみているUSA/」と述べるとともに、潜在成長力を「大きく下回る」状態がしばらく続く公算大であるとの見解を示した。

さらに米失業率が2010年初頭までに10%に達する可能性が高いことにも言及した。これで早期に利上げできるのか──。答えは「ノー」だろう。

米国の過去の金融政策の推移をみると、失業率が上昇を続けている間に引き締めに転じたことは1度もなく、上昇から低下に転じても、直ちに利上げしたことはない。

さて、日銀はどうするのだろうか。10月30日に展望リポートを発表する。そこでは2009年、10年、11年の経済見通しを示す。11年になっても消費者物価指数の前年比がマイナスのままという見通しなら、利上げまでの道のりがかなり遠いということを示すことになるのではないか。

利上げを正式な「出口」とするなら、その姿はまだ、見えていないというのが白川総裁の本音ではないかとみるが、どうだろうか。

(写真/ロイター)

2009年07月09日

7─9月期のコモディティ市場を占う

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

菅田 修司  三菱商事フューチャーズ証券 調査室室長

sugata

マネーは次なる投資先を求めている。大枠としては株式や債券市場、不動産、コモディティーなどのカテゴリー。金融不安に対応した資金供給の反動による過剰流動性の台頭の可能性、それらの結果による将来のインフレ懸念等にスポットライトが当る展開となれば、コモディティーセクションに対する資金配分も高まりが見込まれる。 
 
メタル部門ではゴールドが、引続き高値圏で推移すると見込まれる。根強いドルアセットの見直し観測や先の金融危機における先進国の緊急対策に対する出口戦略と絡んだ金融不安の再燃に対する警戒感、原油相場の高騰から来るインフレヘッジニーズの高まり観測、これらの要因を受けた年金基金等の公的資金の流入も含めたETF残高の安定などだ。
 
グレーン部門は上半期に高値を出し切ってしまったとの観測が高まれば、思ったほどの動意が見られない可能性がある。上半期の高騰の背景には米国産地の天候不順も強く影響していたことで、天候相場期序盤に天候プレミアムを織り込んでしまえば、夏場の気象条件が生産に強くダメージを与えるものとならない限り、秋口から始まる需給相場期まで主だった上昇要因を失ってしまう。
 
ソフト部門では、コーヒーが嗜好品であることで需要に大きなブレが見られない傾向にある一方で、供給は世界最大手のアラビカ種生産国であるブラジル産地が裏作年度に当ることで減産が予想されており、この点に目を付けた仕掛けがあるか否か。 
 
エネルギー部門については、昨今の上昇に対して米国の先物取引を監督する連邦政府機関であるCFTC(Commodity Futures Trading Commission)が調査に乗り出していると伝えられた。このような状況下では、投機マネーも積極的な振り向けには慎重にならざるを得ないと思われる。
 
今年4─6月期末にかけての上昇は、夏場以降の景気回復観測を先取りした感が強いことで、今後出てくる経済指標等が市場の期待に反する数字が続くようであれば、反動安も懸念される。

7─9月期は、上記の概況を踏まえた上で、下半期の「勝ちセクター及び銘柄」を見極める局面と思われる。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。