ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月11日

米国のナローパス

Posted by: 田巻一彦

JAPAN-ECONOMY/FUJIIガイトナー米財務長官が10日に来日し、藤井裕久財務相と会談。きょう11日には鳩山由紀夫首相、菅直人副総理兼国家戦略担当相、白川方明日銀総裁らと会談し、シンガポールへと飛び立った。

日米財務相会談では「ドルを強くしたいとのガイトナー長官の意思を再確認した」と藤井財務相は記者団に語った。

だが、米国は世界経済の不均衡是正に向けた政策協調を目指している。

国際金融に精通したある関係者は「リーマンショック後の政策対応で、財政赤字が急拡大している米国にとって、これ以上、財政に負担はかけられない。米国の目指しているのは、ドル安による輸出拡大を手段にした経済成長だろう」と指摘する。

実際、リーマンショック後の危機に対応するために、米連邦準備理事会(FRB)の取った信用緩和政策で、ドルの流通量が急増し「このまま黙っていても、ドルは自然に下がるような状況になってきた」(邦銀関係者)と、多くの市場関係者から見られるようになった。

米当局が望んでいるのは「ゆっくりしたドル安」だと見られるが、当局がドル安を望んでいると市場に悟られた途端、急落の道を転げ落ちるのが相場の常だ。

この3カ月の間でも、ユーロが対ドルで急上昇し、ドルが全面安に突入して、その後に崩落する展開を想像させるような場面もあった。

ドルが急落すれば、米国債の買い手がいなくなり、米経常赤字をファイナンスできないという「最悪の事態」も、単なる空想とは言えなくなる。

「強いドル」を米当局は志向していると、言い続ける理由がそこにありそうだ。ガイトナー長官は11日、日本の報道陣に対し、米経済にとって強いドルの維持は重要であると繰り返した

米国の金融事情に詳しいある市場関係者は「ドルは急落せず、ゆっくり下がってほしいというのが米国の本音だろうが、そのことが明らかになった瞬間にドルは暴落するだろう。難しいサジ加減を強いられている」と話す。

オバマ大統領は、ロイターとの単独インタビューで、来週の訪中時には、人民元問題を議題として提起する方針を示している。

しかし、問題は人民元の切り上げだけでなく、ドルの問題だという点に世界の目は、集まりつつある。

急落しない程度にドルを下げるという作戦があるならば、その道は「ナローパス」(細い道)であり、ちょっとした横風で細い尾根道から転落しかねないリスクを抱えているのではないだろうか。

(写真/ロイター)

2009年10月07日

コペンハーゲンで考えた東京と五輪

Posted by: 伊賀大記

コペンハーゲンは石造りの建物が道沿いに並ぶヨーロッパらしい街並みだった。訪れた10月初旬は摂氏7度前後。太陽は真昼でも低く厳しい冬の訪れをうかがわせていたが、赤や緑など色鮮やかなオリンピックの看板や旗が所々に飾られ、実際の気温よりも暖かく感じられた。

2016年のオリンピック開催地を決めるIOC(国際オリンピック委員会)総会が開かれるというので、同市にはVIPに応援団、メディアなどが大挙襲来。港区と世田谷区を合わせた程度の面積に人口50万人強が住む街は、海外からの来客でにぎやかだった。

なかでも米国チームは、オバマ大統領夫妻がプレゼンテーションに出席することもあって抜きん出た大所帯で来訪。9つのホテルを借り切ったそうで、宿泊所はどこも満杯。あぶれたこちらは、洗面所にプラスチックの使い捨てコップふたつしかないホテルに170ドル(約1万5000円)も出して泊まらなくてはいけないはめになった。

オリンピック本番ではなく、開催地を決めるだけにもかかわらず、この大騒ぎ。五輪に巨額のマネーが動くようになったのと同時に、開催地決定も一大イベントと化したようだ。

東京都が五輪招致に使った費用は150億円と言われている。鳩山由紀夫首相も、政府専用機を飛ばして現地に駆けつけた。カネなしには招致がかなわないのが現実とはいえ、2016年の五輪開催を勝ち取ったリオデジャネイロ以外の都市や政府は、招致費用について、これから説明を求められることになりそうだ。

東京都はIOC総会の投票前に「Why Tokyo?(なぜ東京なのか?)」と題した会見を開いていたが、裏を返せば、なぜ東京でなくてはならないのかを簡単に伝えることは難しかったということだろう。環境を前面に出したが、スポーツと環境の結びつきもわかりにくかった。

リオのように「初めて」を売りにすることはもうできないのだから、東京の魅力を高め、東京でオリンピックを開いてみたいと関係者が思うような都市にすることが近道なのではないか。そこに環境への取り組みがあってもいい。そのためには築地市場の移転問題などをひとつひとつ解決していくことだろう。

2009年06月02日

GMは再生するか

Posted by: 田巻一彦

GM/ゼネラル・モーターズ(GM)が1日、米連邦破産法11条の適用を申請し、経営破たんした。米政府は新会社の株式を60%取得し、一時、国有化する。「ガバメント・モーターズ」とのジョークが市場から漏れるのも、このためだ。

法的整理を進める過程で、非効率な資産や人員を削減し、身軽になった新生GMで復活を図ることが、今回の一連の対応の目的のようだ。ある邦銀関係者は「これまでトヨタと比べて3割以上も割高だったコストをトヨタ以下にして、再起を図る作戦らしい」と話す。

ただ、いくら低コストになっても、生産する自動車が売れなければ、新生GMの前途も険しくなるという見方も、市場では出ている。GMは、シボレーやキャデラックなど4車種に絞り込むことを表明しているが「ガソリン価格が再び上がり始めている中で、シボレーなどの販売に勢いが付くのか疑問」という声が、金融市場では広がり始めている。

中期的には、環境対応の自動車をどのように戦略化していくかが、GMの将来を左右すると見られている。「ハイブリッドで日本勢など先行するメーカーに追いつくことは難しい」(外資系証券の関係者)と見られており、注目さGM/れるのは電気自動車へのシフトだ。

走行距離や充電システムの広がりの問題など、電気自動車が普及するために乗り越えるべきバーは相当に高そうだが、米国の事情に詳しいある国内市場の関係者は「オバマ政権の中には、電気自動車をGM再生の原動力にしようという動きがある」と話す。

GM再生が可能かどうか──。新経営陣が打ち出すビジネスモデルの内容とともに、オバマ政権が検討していく政策にも、目を配っていく必要がありそうだ。

特集「自動車産業の未来」はこちら。

(写真/ロイター)