米国のナローパス
ガイトナー米財務長官が10日に来日し、藤井裕久財務相と会談。きょう11日には鳩山由紀夫首相、菅直人副総理兼国家戦略担当相、白川方明日銀総裁らと会談し、シンガポールへと飛び立った。
日米財務相会談では「ドルを強くしたいとのガイトナー長官の意思を再確認した」と藤井財務相は記者団に語った。
だが、米国は世界経済の不均衡是正に向けた政策協調を目指している。
国際金融に精通したある関係者は「リーマンショック後の政策対応で、財政赤字が急拡大している米国にとって、これ以上、財政に負担はかけられない。米国の目指しているのは、ドル安による輸出拡大を手段にした経済成長だろう」と指摘する。
実際、リーマンショック後の危機に対応するために、米連邦準備理事会(FRB)の取った信用緩和政策で、ドルの流通量が急増し「このまま黙っていても、ドルは自然に下がるような状況になってきた」(邦銀関係者)と、多くの市場関係者から見られるようになった。
米当局が望んでいるのは「ゆっくりしたドル安」だと見られるが、当局がドル安を望んでいると市場に悟られた途端、急落の道を転げ落ちるのが相場の常だ。
この3カ月の間でも、ユーロが対ドルで急上昇し、ドルが全面安に突入して、その後に崩落する展開を想像させるような場面もあった。
ドルが急落すれば、米国債の買い手がいなくなり、米経常赤字をファイナンスできないという「最悪の事態」も、単なる空想とは言えなくなる。
「強いドル」を米当局は志向していると、言い続ける理由がそこにありそうだ。ガイトナー長官は11日、日本の報道陣に対し、米経済にとって強いドルの維持は重要であると繰り返した。
米国の金融事情に詳しいある市場関係者は「ドルは急落せず、ゆっくり下がってほしいというのが米国の本音だろうが、そのことが明らかになった瞬間にドルは暴落するだろう。難しいサジ加減を強いられている」と話す。
オバマ大統領は、ロイターとの単独インタビューで、来週の訪中時には、人民元問題を議題として提起する方針を示している。
しかし、問題は人民元の切り上げだけでなく、ドルの問題だという点に世界の目は、集まりつつある。
急落しない程度にドルを下げるという作戦があるならば、その道は「ナローパス」(細い道)であり、ちょっとした横風で細い尾根道から転落しかねないリスクを抱えているのではないだろうか。
(写真/ロイター)


