ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年06月01日

「スタグフレーションの序章」?

Posted by: 田巻一彦

GM/GMの米連邦破産法11条の適用申請が1日に行われることになったが、短期的な市場の混乱は1日の東京市場をみても回避されたようだ。「時間をかけてマーケットにGMの破たんを織り込ませてきた米金融当局の作戦勝ち」(邦銀関係者)ということか。

ただ、中長期的には「失業者の増加や消費マインドの低下を引き起こすことで、オバマ政権が打ち出す財政刺激策の効果を減殺するだろう」(外資系証券)とみられている。

さらに金融機関の不良債権問題ものしかかる。ストレステストの結果が仮に真実に近かったとしても「米金融システムが完全に機能回復するには、しばらく時間がかかる」(別の邦銀関係者)とみられている。

そこで重みを増すのが、23日のコーン米連邦準備理事会(FRB)副議長のUSA/発言だ。「FF金利の誘導目標を引き上げるには、まだ時間がかかる」と述べ、現在の超低金利政策がしばらく継続する方向性をにじませた。

29日の投稿でも示したように、世界的な金融緩和の影響で、すでにマネーが再びコモディティ市場に流れ始めている。この投稿へのコメントでは、興味深い指摘が多く、参考になった。インフレを意識したマネーの流れとの見方があったが、確かにそういう面があることは否定できない。

しかし、需要と供給の大きなギャップが現実に存在する中では、典型的なインフレになる可能性はどのくらいだろうか?

他方、スタグフレーションの可能性を指摘する意見もあった。各国による国債の大量発行で、マネーが大量に供給されても、実体経済がピックアップしてこなければ、その可能性も決して小さくはない気がする。

GM破たんという歴史的な出来事をみると、過去に経験したことのない事態が起きそうな予感もするが、どうだろうか。

(写真/ロイター)

2009年05月12日

米楽観相場と「偽りの夜明け」

Posted by: 中川泉

USA/米株式相場は先週、大手銀行に対するストレステストの結果と雇用統計をプラス材料と受け止めて反発した。だが本当に景気が下げ止まり、底打ち・回復していく材料と見なしていいのか、日本の市場参加者の間には慎重な見方も多いようだ。

11日の東京株式市場で、海外勢の買いに対して国内法人の売りという構図になっていたことがそうした姿勢の違いを物語っている。

国内の市場関係者が慎重な姿勢を維持している背景には、やはり日本経済が1990年代に経験したバブル崩壊後の長い低迷期の教訓がありそうだ。

当時、景気が一時的に回復したように見えた状況を、白川方明日銀総裁が4月のニューヨーク講演で「偽りの夜明け」と表現したが、最近の楽観相場について、この表現を引用して解説するエコノミストもいる。

総じて国内エコノミストの米国経済への見方はまだ厳しい。ストレステストの結果について、みずほ証券では「米大手銀行の損失算定根拠は甘い」と断じている。前提となる景気認識について、今後の動向を見なければ判断ができないというのは当然の指摘だろう。 

雇用統計にしても減少ペースがやや緩和したと受け止められているものの、自動車産業でのリストラも控えており、第一生命経済研究所は「今景気後退局面では、700万人以上の雇用減少が予想され、現在の景気刺激策で想定される雇用創出・維持数で相殺することが不可能な状況」と指摘する。

確かに世界経済は、在庫調整の進展や各国の経済対策により企業の生産活動が底なしに落ち込む局面からは変化している。しかし、金融危機の前と後では、人々の行動、そしてそれに伴う需要の伸びや中身も変わっているとすれば、雇用や設備の調整は長引くとみるのが適当ではあるまいか。景気が底打ちから本格回復するまでには、それなりの時間がかかるとみておいた方がよさそうだ。

欧米の市場関係者が今回の金融危機にこれだけ大きなショックを受けながら、楽観相場に引きずられて再び以前と似たような投資行動をとるならば「偽りの夜明け」に、また足をすくわれることにならないだろうか。

(写真/ロイター)

 

 

2009年05月11日

ストレステストの信ぴょう性

Posted by: 田巻一彦

USA/米当局が実施したストレステスト(健全性審査)の結果が7日夕(日本時間8日朝)に発表され、8日の米株市場は上昇した。市場では、一部米銀の国有化リスクが低下したと受け止め、米金融システムの正常化に向けて一歩前進したとの声が出ていた。

だが、マーケットに比べて米国の報道の中には、このストレステストの結果の信ぴょう性を問う論評が目立った。米連邦準備理事会(FRB)と米銀との間で不良債権額の見積もりで相当のかい離があり、FRBが銀行側に折れて、必要な資本注入額は相当に減らされたと指摘した記事もあった。

また、今回のストレステストで前提とされた2010年3月に失業率が10.3%に上昇するとの仮定についても「年内にブレークしてしまう可能性がある。甘い前提に立っている」(外資系証券の関係者)との声も出ている。

さらに議論の前提に使われた2009年1─3月期の決算内容に関しても「負債評価益のような会計上の操作でかなり上乗せされているとみられ、それを前提に出された数字である以上、かなり甘い内容になっている」(邦銀関係者)との指摘も出ている。この負債評価益に関しては、ロイターコラム(5月8日付)で真壁昭夫・信州大教授も指摘している。

東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は「今回の結果の信ぴょう性について、市場では100%がイエスと言っているわけではない」と述べる。複数の市場関係者は、ガイトナー米財務長官が結果発表前に米銀の中に債務超過はないと発言するなど、市場が大きく崩れない方向に誘導する姿勢が鮮明だったと話す。

結果的に米当局に残されているTARP(不良債権救済プログラム)の中の1360億ドルの公的資金の範囲内に、当局からの資金注入額が収まるよう「ストレステストの結果が操作されたという思惑が、マーケットの一部でささやかれている」(先の外資系証券の関係者)という。

株価は上がり、市場のセンチメントも好転して、全員がハッピー──。ストレステストの結果が、実態をそのまま映しているなら、そうなるだろう。だが、違うなら資本注入されても米銀の貸出は増えず、公共投資の増加分が使い果たされた後には「米景気の二番底が待っているということになりかねない」(国内証券の関係者)という予測通りの展開になる。

1360億ドルを使い切ったころに、大きなストレスが米国だけでなく世界経済にかかる可能性があるとみているが、杞憂に終わるだろうか。

(写真/ロイター)