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2009年07月14日

国産車から失われたカリスマ

Posted by: 児玉成夫

国内自動車販売の減少が止まらない。昨年秋以後の大幅下落は、金融危機によるところが大きいが、それを差し引いても長期下落傾向は明白だ。

軽自動車を除く乗用車の2008年の販売台数は281万台で、ピークだった1990年から35%も減った。好調な軽を含めても17%減だ。

こうした傾向は、人口減少、若者の支出の携帯電話へのシフトなどがよく理由に挙げられる。バブル以前と比べると、自動車が単に「足代わり」「下駄代わり」になり、人々(特に若者)のあこがれの対象でなくなったという国産車のカリスマ性喪失の影響も大きいようだ。かつては「いつかはスカイライン」「いつかはクラウン」などと言ったものだが、めっきり聞かれなくなった。

一方で、欧州車を中心に外国製の自動車はまだ、そのカリスマ性を維持しているようだ。なぜ国産車はせん望の対象でなくなったのか。

1つには、あまりに没個性的な車作りがあるのではないか。それがよくわかるのがスタイルだ。どの車も同じような形で、特に前面からだけ見た場合、車種の識別が非常に困難になっている。空気抵抗軽減、燃費改善などためスラントノーズ(フロントグリルの下部が出っ張った形状)の導入が拡大してからは、スタイルの同一化に一段と拍車が掛かったようだ。

AUTOSHOW FORD

失われた個性、カリスマ性を取り戻すのは容易ではなさそうだが、ビッグスリーでただ1つ生き残ったフォードのマスタングの成功は、ひとつのヒントになりそうだ。最近は街で新型マスタングの姿を見ることが多くなってきた。

マスタングは70年代前半のマッスルカー全盛時に若者のカリスマとなったものの、それ以後はオイルショックの影響もあり次第に小型化、カリスマ性も失なわれた。

現在のマスタングは6代目。小型化こそしたものの、初代のデザインを強く意識したものだ。フロントグリルの上部が突き出た逆スラントノーズといえるデザイン。空力効率はやや犠牲になっているのだろうが、サメを髣髴(ほうふつ)とさせる精かんなスタイルで魅力をアピール、マイナス面を克服している。久々に「アメ車」らしい「アメ車」に出会ったと感じたのは、筆者だけではあるまい。

国産車メーカーは、世界的経済混乱が収集すれば、日本市場は低調のままでも、新興国相手に十分やっていけると考えているのかもしれないが、国産車のカリスマ復活、さらに市場活性化にもうひと工夫欲しいところだ。

テレビでは城山三郎氏の代表作である「官僚たちの夏」の放映が始まった。通産省(現経産省)の官僚と企業が一体となって、外車の性能に追いつき追い越すことを目標に、必死に国産車を育成する姿が描かれている。50年以上前の話で隔世の感もあるが、今一度その姿勢を思い出してみてもよいのではないだろうか。

「特集 自動車産業の未来」はこちらから

(写真/ロイター)