ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月24日

政府のデフレ宣言と日銀

Posted by: 田巻一彦

JAPAN/政府が先週、デフレ宣言に踏み切った。24日の閣議後、主要な経済閣僚からは、日銀が何かすべきだと言わんばかりの発言が相次いだ。

藤井裕久財務相は「物価は金融の問題」と言い切り、亀井静香郵政・金融担当相は「日銀は相変わらず、寝てしまっている」と言い放った。

だが、白川方明日銀総裁は20日の会見で「需要自体が不足している時には、流動性を供給するだけでは物価は上がってこない」と述べている。

マーケットからは責任の押し付け合いで、日本の信認を下げているとの声も出ているようだ。実際、3連休明けの24日の東京株式市場は、前日の米株式市場が上昇したにもかかわらず、約1%の下げとなった。海外勢からは「円資産は嫌悪されている」(外資系証券の関係者)との声が出ている。

糸がからまったような状況だが、こういうときは現象を整理してみることが必要ではないか。

まず、緩やかな物価下落(デフレ)とデフレスパイラルは、別の現象であるということだ。物価と賃金、生産が連動して下がっていれば、正真正銘のデフレスパイラルだが、9月の鉱工業生産をみても生産は明確に上昇している。白川総裁は20日の会見でデフレスパイラルに陥っていないと表明した。

一方で物価が緩やかに下がれば、短期的には購買力が上がる。7─9月期の国内総生産(GDP)で個人消JAPAN-ECONOMY/SHIRAKAWA費が伸びたのも、確かにエコカー減税の効果も大きかっただろうが、実質的な購買力の上昇も見逃せないだろう。

短期的には企業が抱えている社内失業者をはき出させないことが、デフレスパイラルに突入しないために欠かせない。厚生労働省によると、雇用調整助成金を申請した事業所が対象にしている従業員は、199万4383人に上る。

約200万人の雇用を維持し、さらに雇用を拡大させるために多様な面からアプローチした総合対策を打ち出し、その中に成長戦略も盛り込み、財政も支出を拡大させ、日銀も何らかの知恵を絞る──。

政府と日銀は、予算編成作業が本格化する前に本音をぶつけ合う場を設け、この閉そく感から抜け出せる対応策を出してほしい。

(写真/ロイター)

2009年10月23日

デフレとインフレ、現実的脅威は?

Posted by: 田巻一彦

USA/米連邦準備理事会(FRB)の中で、この先の経済情勢と金融政策のスタンスをめぐり、微妙ながら根本的な見解の相違が見えつつある。その核にあるのは、「デフレとインフレのどちらに対応するべきか」という問題だ。

コーンFRB副議長は13日のセントルイスでの講演で「基調的なインフレ率は当面、一段と低下するリスクの方が上昇するリスクより大きいとみている」と語った。

ダドリーニューヨーク連銀総裁は5日の講演で、FF金利は長期わたり異例の低水準にとどまる公算が大きいとの見解を示し、日銀流の「時間軸」をマーケットに意識させる発言で注目を集めた。

一方、リッチモンド連銀のラッカー総裁は1日、ラジオインタビューの中で、失業率が低下し始める前にFRBは金融引き締めに着手する可能性があるとの見解を示していた。また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は11日、インフレリスクを過小評価するべきでないとの見解を示していた。

この見解の対立には、根深い考え方の相違がありそうだ。リーマン・ショック後の消費の大幅な減少を受け、米国内の供給力は需要を大幅に上回る需給ギャップが生じることになった。その結果、物価には低下圧力がかかり、コーン副議長に代表される見解が出るにいたった。

他方で、クレジット市場をはじめとするマーケット機能を復活させるため、FRBは大量の金融資産を購入し、マネーを市場に大量に供給した。この余剰マネーのうねりが中期的にインフレになるリスクを増大させているというのが、インフレ警戒論の論拠だろう。

さらに事態を複雑化させているのは、このマネーは米国からだけではなく、欧州や日本からもばらまかれ、グローバルに駆けめぐっているという今日的な事態に直面していることだ。

米市場では、根本的な信用の回復が実現していないため、貸し出しが増える兆候はなく、あまったマネーがバブルを生む気配は今のところない。しかし、豪州や南アフリカ、ブラジルなどの通貨やその他の資産はどんどん値上がりし、バブルが明らかに膨らみ始めている。

たぶん、米国でインフレになることはなく、FRB主流派の意見が通って、超緩和政策は米国でも長期化する可能性があるとみている。そうなると世界のどこかでバブルが爆発するリスクが増大する。別の国のバブルを抑制するために、米国が引き締めに転じることはないだろう。

この2世紀にわたって定着してきた感がある国ごとの金融政策が、うまく機能しなくなっているように思うが、別の仕組みを考える動きは、世界の当局者からまったく聞こえてこない。新たなバブル崩壊がこの先、数年後に起きたらかなりの混乱に直面すると思うが、よい対応策はないだろうか。

(写真/ロイター)

2009年10月15日

日米とも遠そうな利上げへの道

Posted by: 田巻一彦

JAPAN-ECONOMY/日銀の白川方明総裁は14日の会見で、物価下落が原因となる景気悪化の可能性を注意していく、との見解を表明した。

時限措置の取り扱いにかかわらず、超低金利を維持していくスタンスを鮮明にしており、超緩和策が長期化する弊害への言及は目立たなかった印象だ。

日銀は足元の国内経済が、デフレに陥っているという認識には至っていない。そうした中での白川総裁の発言である。日銀が下方向へのリスクに敏感になっていると受け取ってもいいのではないか。

実際、国内のGDPギャップは、最近の生産回復基調をもってしても、依然としてかなりの規模になっているもようだ。このことは国内物価の下押し圧力が小さくなっていないことを意味し、悪い物価下落になる兆しが出始めているのではないかとの疑念も出てくる要素になる。

一方、コーン米連邦準備理事会(FRB)副議長は、13日のセントルイスでの講演で「基調的なインフレ率は当面、一段と低下するリスクの方が上昇するリスクより大きいとみているUSA/」と述べるとともに、潜在成長力を「大きく下回る」状態がしばらく続く公算大であるとの見解を示した。

さらに米失業率が2010年初頭までに10%に達する可能性が高いことにも言及した。これで早期に利上げできるのか──。答えは「ノー」だろう。

米国の過去の金融政策の推移をみると、失業率が上昇を続けている間に引き締めに転じたことは1度もなく、上昇から低下に転じても、直ちに利上げしたことはない。

さて、日銀はどうするのだろうか。10月30日に展望リポートを発表する。そこでは2009年、10年、11年の経済見通しを示す。11年になっても消費者物価指数の前年比がマイナスのままという見通しなら、利上げまでの道のりがかなり遠いということを示すことになるのではないか。

利上げを正式な「出口」とするなら、その姿はまだ、見えていないというのが白川総裁の本音ではないかとみるが、どうだろうか。

(写真/ロイター)