ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年08月07日

英中銀決断の意味

Posted by: 田巻一彦

BRITAIN/イングランド銀行(英中銀)が6日、資産買い入れプログラムの枠を1250億ポンドから1750億ポンドに拡大することを決めた

いわゆる量的緩和の拡大を英中銀は決断したわけだが、市場では反対に量的緩和を休止する方向で政策が決まるのではないかとの思惑が強かった。

その結果、英中銀の決定発表後、ポンドは対ドルで1%超の下げとなる一方で、FT100種総合株価指数はザラ場の年初来高値を更新した

英中銀は、銀行の融資抑制が消費回復の重荷になると分析するとともに、キング総裁はダーリング財務相への書簡で「信用収縮が続いている」と指摘した。

早い話が、英国における金融仲介機能が回復していないため、量的緩和の拡大を決断した、と言える。では、英金融システムでは何が起きているのか。

英当局は、英系銀の不良債権の状況に関し、詳細なデータを公表していないためはっきりしないが、日本の過去の経験からすると「不良債権額が相当に大きくなって、新たな融資を拡大するだけのリスクテーク能力がない状態に直面している」(邦銀関係者)ということが想定できる。

英国でも、住宅価格だけでなく、商業用不動産の下落が深刻で、英系銀はその経路から不良債権が増大している可能性があると、その邦銀関係者は指摘する。

米金融機関の動向に詳しいある国内金融機関の関係者も「米国でも同様に商業用不動産の下落が大きくなっており、ピーク時から30%下落している。しかし、米系銀の多くは、その関連の不良債権処理に手を付けていない。サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン )の危機に相当するような大きなショックがこれから来る可能性がある」と分析している。

市場には、英中銀は出口を模索するとの思惑があった。しかし、出口は見えていないのではないか。

それが米国、欧州でも同じであるなら、そう遠くない時期に市場で何らかのトレンド転換点が来るように思われるが、みなさんはどう考えているのだろか。

(写真/ロイター)

2009年06月29日

ドルの信認は維持できるか

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

真壁昭夫 信州大学・経済学部教授

makabe過去数カ月、頭から離れない命題がある。世界最大の対外債務国である米国が、首尾よく、短期間でバブルの後始末を行うことができるか否かだ。

現在、米国が直面しているバブルの後始末は、その規模において、人類史上最大のものだ。債務国である米国が、うまくこの難局を乗り越えられるかどうか、好むと好まざるにかかわらず、壮大な規模の実験が始まっている。

米国はわが国と違って、世界最大の債務国だ。国内には、新たに発行される国債の消化に十分な資金がない。わが国や中国、産油国などの貿易黒字国の投資資金を引っ張ってこない限り、国債の消化に障害が出る可能性がある。

また、無理やり国債の消化を図って、中央銀行であるFRB(米連邦準備理事会)に国債の買い取りをさせると、短期的な国債消化の問題は取りあえず解決されるものの、中・長期的には、インフレ懸念に火を着けることになりかねない。

それは、単なる国内問題では済まされない。FRBが国債を買い上げるということは、単純に考えると、輪転機で多額のドル紙幣を印刷して、それを市中にばらまくことを意味する。ばらまかれたドル紙片の価値を、長期間維持することは難しい。

いずれ、ドルの信認が薄れ、価値が下落することは避けられない。ドルが基軸通貨である以上、貿易や資金貸借の決済に使われている。そのドルの価値が不安定になることは、世界の金融システムに大きな混乱を生じさせることになる。

ドルに対する信認が低下し、それに伴って米国債の金利が上昇するようなことがあると、米国を中心に動いてきた世界経済の構図が大きく変化する可能性がある。それは、バブルの当事者である米国が、いかにうまく、バブルの後始末を行うことができるかに掛かっている。

*全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年03月26日

ドルと「才能の無い人気タレント」

Posted by: 森佳子

MARKETS-GLOBAL/

危機対応という大義名分はあるものの、ドルを印刷する輪転機を超高速で回し続け、印刷したドルで米国債から金融機関の不良資産まで買い取るという米国の姿を見て、普通の人は少なからずとも「ドルは大丈夫なのか」と不安を抱いているに違いない。

ノンフィクション作家の高橋秀実氏は、おカネとは「才能の無い人気タレント」のようなものだとして、「TVによく出ているから、そのタレントが『支持されている』と人々は思い、支持されているから支持するようになる」と言うが、今のドルはまさに無能な人気タレントではないだろうか。

人気という意味でドルの時代は十分に長い。国際金融界でドルが前人気タレントだった英ポンドを完全に蹴落とし、名実共に新基軸通貨の地位を安定させたのは1960年代だ。あれから半世紀の月日が流れた。

基軸通貨は人気タレント同様に、使われる事で自らの存在価値を確認し「使われなくなったら、ただの能無しに戻ってしまうという潜在的恐怖を常に抱えているのだ」(高橋氏)──。

恐怖の裏返しからか、ガイトナー米財務長官らがドルに変わる新たな準備通貨の創設を拒否する考えを示す一方で、オバマ米大統領までが「ドルが現在強いのは、米国が世界で最も強い経済であり、政治システムが最も安定していると投資家がみなしているからだ」と言い出した。

しかし、あまりにも懇切丁寧に人気の理由を説明されると、人々は引いてしまうものである。

ロシアは4月の20カ国・地域(G20)首脳会議で、国際機関が発行する新たな準備通貨の創設を提案するという。また、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)が準備通貨として機能する潜在力があると指摘し、ドルに取って代わる可能性を示唆した。新人気タレント候補の登場だ。

だが、人気タレントとドルには違う所がある。人気タレントは誰にも相手にされなくなれば、ただ廃れるだけだが、ドルは多くの国を巻き込む壮大な後始末が必要だ。準備通貨がドルからSDRに取って代わるのはいいが、呼び名を変えたところで、世界中に積み上がったドルの累積債務が軽減されるわけではない。

中国の温家宝首相は13日、「中国は米国に多額の資金を貸し付けている」と述べ「当然ながら、その資産の安全性をわれわれは懸念している。正直言えば、わたしは少々不安だ」と述べた

わが国が外貨準備で保有する1兆ドルの対米債権は無傷で返してもらえるのだろうか。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は25日、「外貨準備は為替介入に備えて保有している」とし、「外貨準備の市中売却は為替に不測の影響を及ぼすため、適当ではない」と指摘。「米国債を中心とした運用を変更する考えはない」と語った。

日本、中国、産油国などの主要な対米債権国が今すべきことは、米国に対して嫌味を言うことでも、現状に目をつぶることでもなく、ドルの基軸通貨としての役割をフェードアウトさせる道筋を付けることではないだろうか。そしてそれは債権国の間で大きな痛み分けを伴う。

日本にその覚悟があるのか、それとも中国が主導権を握るのか。 まだ、見えぬ結末をどのように見通すべきだろうか。

(写真/ロイター)