ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年10月27日

米消費の「ニューノーマル」志向

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

makabe真壁昭夫 信州大学・経済学部教授

最近の株式市場の推移を見ると、投資家心理が振れていることが分かる。人々の心の中で、景気回復期待が盛り上がったり、後退したりを繰り返している。実体経済は、短期間にそれほど大きく変わることはないはずだから、そうした振れは、景気を見る側の認識の問題なのだろう。

現在の世界経済の状況を考えるとき、経済をフローとストックの2つの視点からみると分かりやすい。

経済のフローの側面から見ると、米国をはじめ世界の経済はかなり改善している。世界的に在庫調整が一巡し、主要国の積極的な経済対策の効果が顕在化しているからだ。

中国やインド、ブラジルなどの新興国は、政府の景気対策の効果もあり、経済はかなり元気を取り戻している。今のところ新興国の経済が世界全体を持ち上げるほどのマグニチュードはないものの、新興国向け輸出の拡大や、新興国の株式市場の上昇などのパスを通って、世界経済に明るい要素を提供している。

一方、ストック面に目を移すと、見えてくる景色はかなり異なる。米国など主要先進国を中心にまだ、大きな課題が残っているからだ。

米国の住宅価格は下げ止まりの兆候を見せているものの、11月には政府の初期住宅取得者に対する8000ドルの減税措置が終了する。その後の住宅価格の展開については、完全に不透明感を拭い去ることはできない。

人々はとりあえずストックのき損を忘れて、フローベースの経済活動に目をやることで、心理状態を改善させたくなる。ストックのき損部分に目をつぶり、フローの改善部分だけ見ていれば、なんとか元気になれるからだ。

ただ、悪いことに目をつぶっていても、フローの改善に停滞感が出たり、ストック部分のき損が拡大するようなことがあると、人々は、どうしてもストック部分に目を向けざるを得なくなる。現在はまさに、そうした状況なのである。

自分の身の回りに「バブルの残骸」が残っていることに気がついても、以前のように、過度に悲観的になることはない。しかし、まったく無頓着にお金を使える状況でないことが分かる。

そうなると不要不急の出費を抑えて、できるだけ効率よく生活しようとするはずだ。つまり適切な学習効果によって、それまでのような放蕩(ほうとう)生活から離脱するのである。

それが一部の経済専門家が言う「ニューノーマル」という経済状態だろう。

先進国の中でも特に米国の家計部門が、「ニューノーマル」という新たな定常状態を指向すると、世界経済はすぐに以前のような好調な経済状態を再現することは難しい。

当面、相対的に低い成長率が続くことになるはずだ。時を経て新興国の経済規模は大きくなり、世界経済全体を持ち上げられるようになるまで、世界的な高成長を期待することは困難だろう。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年10月23日

デフレとインフレ、現実的脅威は?

Posted by: 田巻一彦

USA/米連邦準備理事会(FRB)の中で、この先の経済情勢と金融政策のスタンスをめぐり、微妙ながら根本的な見解の相違が見えつつある。その核にあるのは、「デフレとインフレのどちらに対応するべきか」という問題だ。

コーンFRB副議長は13日のセントルイスでの講演で「基調的なインフレ率は当面、一段と低下するリスクの方が上昇するリスクより大きいとみている」と語った。

ダドリーニューヨーク連銀総裁は5日の講演で、FF金利は長期わたり異例の低水準にとどまる公算が大きいとの見解を示し、日銀流の「時間軸」をマーケットに意識させる発言で注目を集めた。

一方、リッチモンド連銀のラッカー総裁は1日、ラジオインタビューの中で、失業率が低下し始める前にFRBは金融引き締めに着手する可能性があるとの見解を示していた。また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は11日、インフレリスクを過小評価するべきでないとの見解を示していた。

この見解の対立には、根深い考え方の相違がありそうだ。リーマン・ショック後の消費の大幅な減少を受け、米国内の供給力は需要を大幅に上回る需給ギャップが生じることになった。その結果、物価には低下圧力がかかり、コーン副議長に代表される見解が出るにいたった。

他方で、クレジット市場をはじめとするマーケット機能を復活させるため、FRBは大量の金融資産を購入し、マネーを市場に大量に供給した。この余剰マネーのうねりが中期的にインフレになるリスクを増大させているというのが、インフレ警戒論の論拠だろう。

さらに事態を複雑化させているのは、このマネーは米国からだけではなく、欧州や日本からもばらまかれ、グローバルに駆けめぐっているという今日的な事態に直面していることだ。

米市場では、根本的な信用の回復が実現していないため、貸し出しが増える兆候はなく、あまったマネーがバブルを生む気配は今のところない。しかし、豪州や南アフリカ、ブラジルなどの通貨やその他の資産はどんどん値上がりし、バブルが明らかに膨らみ始めている。

たぶん、米国でインフレになることはなく、FRB主流派の意見が通って、超緩和政策は米国でも長期化する可能性があるとみている。そうなると世界のどこかでバブルが爆発するリスクが増大する。別の国のバブルを抑制するために、米国が引き締めに転じることはないだろう。

この2世紀にわたって定着してきた感がある国ごとの金融政策が、うまく機能しなくなっているように思うが、別の仕組みを考える動きは、世界の当局者からまったく聞こえてこない。新たなバブル崩壊がこの先、数年後に起きたらかなりの混乱に直面すると思うが、よい対応策はないだろうか。

(写真/ロイター)

2009年06月29日

ドルの信認は維持できるか

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

真壁昭夫 信州大学・経済学部教授

makabe過去数カ月、頭から離れない命題がある。世界最大の対外債務国である米国が、首尾よく、短期間でバブルの後始末を行うことができるか否かだ。

現在、米国が直面しているバブルの後始末は、その規模において、人類史上最大のものだ。債務国である米国が、うまくこの難局を乗り越えられるかどうか、好むと好まざるにかかわらず、壮大な規模の実験が始まっている。

米国はわが国と違って、世界最大の債務国だ。国内には、新たに発行される国債の消化に十分な資金がない。わが国や中国、産油国などの貿易黒字国の投資資金を引っ張ってこない限り、国債の消化に障害が出る可能性がある。

また、無理やり国債の消化を図って、中央銀行であるFRB(米連邦準備理事会)に国債の買い取りをさせると、短期的な国債消化の問題は取りあえず解決されるものの、中・長期的には、インフレ懸念に火を着けることになりかねない。

それは、単なる国内問題では済まされない。FRBが国債を買い上げるということは、単純に考えると、輪転機で多額のドル紙幣を印刷して、それを市中にばらまくことを意味する。ばらまかれたドル紙片の価値を、長期間維持することは難しい。

いずれ、ドルの信認が薄れ、価値が下落することは避けられない。ドルが基軸通貨である以上、貿易や資金貸借の決済に使われている。そのドルの価値が不安定になることは、世界の金融システムに大きな混乱を生じさせることになる。

ドルに対する信認が低下し、それに伴って米国債の金利が上昇するようなことがあると、米国を中心に動いてきた世界経済の構図が大きく変化する可能性がある。それは、バブルの当事者である米国が、いかにうまく、バブルの後始末を行うことができるかに掛かっている。

*全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。