米消費の「ニューノーマル」志向
*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。
最近の株式市場の推移を見ると、投資家心理が振れていることが分かる。人々の心の中で、景気回復期待が盛り上がったり、後退したりを繰り返している。実体経済は、短期間にそれほど大きく変わることはないはずだから、そうした振れは、景気を見る側の認識の問題なのだろう。
現在の世界経済の状況を考えるとき、経済をフローとストックの2つの視点からみると分かりやすい。
経済のフローの側面から見ると、米国をはじめ世界の経済はかなり改善している。世界的に在庫調整が一巡し、主要国の積極的な経済対策の効果が顕在化しているからだ。
中国やインド、ブラジルなどの新興国は、政府の景気対策の効果もあり、経済はかなり元気を取り戻している。今のところ新興国の経済が世界全体を持ち上げるほどのマグニチュードはないものの、新興国向け輸出の拡大や、新興国の株式市場の上昇などのパスを通って、世界経済に明るい要素を提供している。
一方、ストック面に目を移すと、見えてくる景色はかなり異なる。米国など主要先進国を中心にまだ、大きな課題が残っているからだ。
米国の住宅価格は下げ止まりの兆候を見せているものの、11月には政府の初期住宅取得者に対する8000ドルの減税措置が終了する。その後の住宅価格の展開については、完全に不透明感を拭い去ることはできない。
人々はとりあえずストックのき損を忘れて、フローベースの経済活動に目をやることで、心理状態を改善させたくなる。ストックのき損部分に目をつぶり、フローの改善部分だけ見ていれば、なんとか元気になれるからだ。
ただ、悪いことに目をつぶっていても、フローの改善に停滞感が出たり、ストック部分のき損が拡大するようなことがあると、人々は、どうしてもストック部分に目を向けざるを得なくなる。現在はまさに、そうした状況なのである。
自分の身の回りに「バブルの残骸」が残っていることに気がついても、以前のように、過度に悲観的になることはない。しかし、まったく無頓着にお金を使える状況でないことが分かる。
そうなると不要不急の出費を抑えて、できるだけ効率よく生活しようとするはずだ。つまり適切な学習効果によって、それまでのような放蕩(ほうとう)生活から離脱するのである。
それが一部の経済専門家が言う「ニューノーマル」という経済状態だろう。
先進国の中でも特に米国の家計部門が、「ニューノーマル」という新たな定常状態を指向すると、世界経済はすぐに以前のような好調な経済状態を再現することは難しい。
当面、相対的に低い成長率が続くことになるはずだ。時を経て新興国の経済規模は大きくなり、世界経済全体を持ち上げられるようになるまで、世界的な高成長を期待することは困難だろう。
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