ロイターブログ

討論×闘論

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2009年08月05日

期待先行の株式市場の「危うさ」

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイトコラム」に掲載された寄稿を抜粋しました。

makabe2真壁昭夫 信州大学・経済学部教授

世界の主要株式市場は、足元でいずれも景気回復期待を先取りする格好で堅調な展開になっている。企業業績が予想以上の回復を示しているため、投資家間では「景気は、予想よりも早期に回復するかもしれない」という期待が盛り上っている。

投資家の中には、保有株式の割合を引き上げたり、ヘッジ目的で売り建てた先物のショート・ポジションを手仕舞う動きが出ている。それが、最近の株式市場の上昇を演出する要素になっている。

実体経済に目を転じると、依然として懸念材料が多い。世界経済のけん引役である米国は、4-6月の国内総生産(GDP)マイナス幅が縮小したとはいうものの、まだ水面下であることに変わりはない。

労働市場の回復が遅れていることに加えて、商業用不動産価格の下落が鮮明化するなど景気に対する懸念材料は多い。経済対策の効果によって、モメンタムを回復しつつある中国など新興国の経済の先行きにも、経済効果の息切れなど懸念材料もある。

米国のCPや証券化商品市場の動向を見ると、今年4月以降、かなり機能が回復しているように見えるものの、その背景には、米連邦準備理事会(FRB)の買い取りファシリティーがあることを忘れてはならない。中央銀行であるFRBが自己のバランスシートを使って、多額の金融商品の買い取りを行っていることが市場の機能を支えているともいえる。

それは、本来の市場の姿でないことは明らかだ。また、緊急避難的な政策発動の負担によって、政府やFRB、さらに州政府などの財政状況の悪化が顕著なことも大きなマイナス要因だ。

米国経済については、他にも無視できない懸念材料が残る。1つは、労働市場の回復が遅れていることだ。企業業績回復の理由の一端がリストラによる費用低減にあるとすれば、結果として、労働市場が悪化することは当然といえるだろう。その現象は、米国だけに限らない。

また、商業用不動産価格の下落が鮮明化していることも気になる。米国の住宅価格の下落には、取りあえず、歯止めが掛かりつつあるとの見方が出ているものの、商業用不動産価格の下落は一段と鮮明化している。

知り合いのニューヨーク在住のファンドマネジャーは、多くの投資家が強気に傾くと、大きな調整がある可能性が高いので「株価が高いところで、プットを買ってヘッジしておく」と言っていた。賢明なオペレーションと考える。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年05月21日

「3×5=18、5×5=20」

Posted by: 水野文也

blog0521表題に記した計算式は答えが間違っている。読者の方々をバカにして書いたのではなく、温暖な陽気のせいでもない。マーケットにおける算術を示した「相場格言」の1つだ。

これを述べたのは往年の投機家として知られるアンドレ・コストラニイ。投資の世界では正確に計算しても、その通りに物事が運ばないことを示す言葉で、人気など数字に表すことができない変数などを加味して分析しないと、正しい相場の見方はできないことを意味している。

その点からいうと、証券会社のレーティングやターゲットプライスは、おそらく「3×5=18、5×5=20」といった計算式で弾き出されたものではないだろう。これまでの低迷相場で底値におけるレーティング引き下げが少なからず見受けられた点を踏まえれば、相場の流れやアヤ、投資家心理などはもちろん、ヘッジファンドの動向といった需給も反映されない場合も多いようだ。

足元のファンダメンタルズについての分析が重要な作業であることは言うまでもない。しかし、それだけに縛られて本質を見誤る市場参加者が多いからこそ、相場算術では「3×5=18、5×5=20」となる。

これを現状の相場全般に当てはめるとどうなるだろうか。1─3月期の実質国内総生産(GDP)が戦後最悪の年率換算値となるなどマクロ指標や、年度後半回復がコンセンサスになっている企業業績見通しに市場が自信を持ち切れない現状からみると、どうしても先行きに対して慎重な見方が優勢となる。

ところが、現実の株式市場をみると、押せば買いが入るといった底堅い動きに変化がみられない。ひと頃に比べると需給状態が大きく改善しているのがその理由だ。金利全般が低下傾向にあることを受けて海外ヘッジファンドは資金調達がしやすくなり、一部のファンドはポジション的に余裕が出てきたことから、株式の需給は「不景気の株高」を演出する流動性相場が起きうるとみる関係者もいる。

最近の欧州勢による日本買い活発化や、総選挙後にインド株が急騰したことなどは、世界的な金融緩和策がマーケットに与えたプラス効果と無縁ではなさそうだ。流動性相場が業績見通しを超すオーバーシュートをもたらす──そんな見方をする関係者が増えても不思議ではない。

2009年05月08日

トヨタの業績予想、相場を計る試金石に

Posted by: 水野文也

toyota28日に発表されたトヨタ自動車の2010年3月期業績見通しは、連結営業損失が8500億円と前期に比べて赤字幅が拡大、主要アナリストの予測を大きく上回るネガティブ・サプライズとなった。

市場で声を拾ってみると、出てきた予想値は厳しいながら、「トヨタショック」というような相場全体が崩れるまでは至らない──との見方も出ている。

前提となる為替レートをドル/円で95円、ユーロ/円で125円と想定、これ1つ取っても見通しが保守的と受け止めるムードがあるほか、株式市場では年度後半から来上半期の収益回復を織り込むような動きになっているためだ。

実際、トヨタにしても、上下に分けて予想をみた場合、上半期の営業赤字が6000億円に対して下半期が2500億円と、3500億円も改善する。

この巨額赤字予想に対する市場の解釈は「トヨタ独自の事情によるもの」「自動車業界全体の構造的な要因から」「日本経済全体の先行きを示唆する数字」──のいずれかになると思われるが、業績予想をもとにした相場全体の見通しに対するマーケット・コンセンサスを、トヨタ決算を受けた週明け11日のマーケットの動きで探ることができる。

ここにくるまで東京株式市場は、踏み上げとも言える場面を交え戻りを鮮明にしてきた。大規模に日本株を売り込んだファンド筋が運用責任者の退社に伴い買い戻しを急いだとの観測もあり、公表された空売り報告をみると、それらしき動きも散見されるものの、こうした思惑を除けば、売り方は企業業績の回復見通しが立ったがゆえに手仕舞いしているとみるのが自然だろう。

買戻しがそのまま進むか、いったん止まるか──それを見極める上でもトヨタの決算は試金石となりそうだ。

(写真/ロイター)