期待先行の株式市場の「危うさ」
*この投稿は、ロイターの「インサイトコラム」に掲載された寄稿を抜粋しました。
世界の主要株式市場は、足元でいずれも景気回復期待を先取りする格好で堅調な展開になっている。企業業績が予想以上の回復を示しているため、投資家間では「景気は、予想よりも早期に回復するかもしれない」という期待が盛り上っている。
投資家の中には、保有株式の割合を引き上げたり、ヘッジ目的で売り建てた先物のショート・ポジションを手仕舞う動きが出ている。それが、最近の株式市場の上昇を演出する要素になっている。
実体経済に目を転じると、依然として懸念材料が多い。世界経済のけん引役である米国は、4-6月の国内総生産(GDP)マイナス幅が縮小したとはいうものの、まだ水面下であることに変わりはない。
労働市場の回復が遅れていることに加えて、商業用不動産価格の下落が鮮明化するなど景気に対する懸念材料は多い。経済対策の効果によって、モメンタムを回復しつつある中国など新興国の経済の先行きにも、経済効果の息切れなど懸念材料もある。
米国のCPや証券化商品市場の動向を見ると、今年4月以降、かなり機能が回復しているように見えるものの、その背景には、米連邦準備理事会(FRB)の買い取りファシリティーがあることを忘れてはならない。中央銀行であるFRBが自己のバランスシートを使って、多額の金融商品の買い取りを行っていることが市場の機能を支えているともいえる。
それは、本来の市場の姿でないことは明らかだ。また、緊急避難的な政策発動の負担によって、政府やFRB、さらに州政府などの財政状況の悪化が顕著なことも大きなマイナス要因だ。
米国経済については、他にも無視できない懸念材料が残る。1つは、労働市場の回復が遅れていることだ。企業業績回復の理由の一端がリストラによる費用低減にあるとすれば、結果として、労働市場が悪化することは当然といえるだろう。その現象は、米国だけに限らない。
また、商業用不動産価格の下落が鮮明化していることも気になる。米国の住宅価格の下落には、取りあえず、歯止めが掛かりつつあるとの見方が出ているものの、商業用不動産価格の下落は一段と鮮明化している。
知り合いのニューヨーク在住のファンドマネジャーは、多くの投資家が強気に傾くと、大きな調整がある可能性が高いので「株価が高いところで、プットを買ってヘッジしておく」と言っていた。賢明なオペレーションと考える。
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