ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年08月31日

民主党勝利で何が「Change」するのか

Posted by: 西山誠慈

JAPAN-ELECTION/

衆院選において民主党が300議席以上を獲得する圧勝で、政権の座に就くことになった。

選挙戦では、民主党が掲げた子ども手当てやそれをめぐる財源の問題が注目されたが、選挙結果について、落選した自民党候補と当選した民主党候補が共に同じ要因を挙げていた──最大の要因はこれまで続いてきた自民党政権に対する批判だと。

自民党候補は、それにより政策を訴えても有権者に聞き入ってもらえなかったとし、逆に民主党の候補は、今回の勝利は民主への支持よりも自民への批判によるものだと自らを戒めていた。

共和党と民主党による2大政党制が定着し、政権交代が定期的に起こる米国に比べ、日本では1955年の結党以来ほぼ一貫して政権与党であった自民党が下野するのは、93年の細川護熙内閣誕生以来、たったの2度目である。

次期首相になる鳩山由紀夫民主党代表は選挙期間中、アメリカでのオバマ政権誕生になぞらえて、日本にも「Change」が必要と訴えてきたが、この政権交代で我々の生活にどのような変化が起きるのだろうか。

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(写真/ロイター)

2009年08月14日

「日本人をやめたい人々」

Posted by: 中川泉

最近、サラリーマンの間で「日本人をやめさせてほしい」というフレーズが流行っているという。

このセリフは、バブル時代に不動産ころがしで大もうけした某氏が、税務署に対して言った文句だが、今は、まじめに税や社会保障費を負担しているサラリーマンがつぶやく言葉だ。前回の景気拡大局面では、企業収益は拡大しても労働分配率は上がらなかった。税・社会保障負担感だけが増大し、将来への不安が募る中、思わず口をついて出るセリフだ。

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自民党政権下では、「所得再分配」は家計より企業に偏りがち、若い世代より高齢者に手厚く、働く人々への分配は手薄かったというのが多くの人の印象だろう。特にこの5、6年はそうした傾向が強まった。一方で、企業部門を中心にマクロ経済全体としては成長しているのだから、それでよしというのが自民党の発想だった。その間に、所得の問などで、国民年金や健康保険料の滞納がはびこり、最後にはまじめなサラリーマンまでが税・社会保険料の重圧で「日本人をやめたい」という気分が蔓延してしまったわけだ。
 
一方で民主党は、確かにこれまでなおざりにされてきた家計への所得再分配を厚くしようという新しい方向性を示し、これまでの歪みを修正しようという姿勢がうかがえる。

ただし、岡田幹事長が言うように「子育てのコストは社会全体でになう」となると、子供のいない世帯はコストだけ負担するような印象になりかねない。それでも子供のいない人達が、子育て支援のために重たい負担にも甘んじてきちんと納税するのは、将来への期待があるからだ。それこそが「成長戦略」にあたるわけだ。それがなくてはやはり「日本人をやめさせてほしい」という人は増えることだろう。

国家をになう政治家は、所得再分配で損・得の合計をゼロにするだけの存在ではない。公平なる「所得再分配」と、全体のパイを広げる「成長戦略」の両立を期待するのは、当然だろう。この国ではこれまでその二つがうまく両立できなかった。民主党は、その両立をはかるべく、11日に成長戦略を追加・修正した。その項目は消費拡大や農業での雇用創出、環境関連産業の支援といったもので、前者はいわば所得再配分がうまくいった場合の結果ともいえる。

それにしても、成長の過程ではどうしても所得分配は偏るものだろうか。公平な所得分配で高成長を遂げている国があるのだろうか。今度の総選挙では、自民、民主どちらが政権をとることになっても、少なくとも「日本人をやめたい」などと考える国民が増えないような政治を期待したいものだ。

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(写真/ロイター)

2009年07月24日

「最低時給1000円」考

Posted by: 水野文也

前回取り上げた「子ども手当て」に関して、読者の皆様から貴重な意見を数多く頂き、民主党のマニフェストに対する関心が改めて高いと感じた。そこで、続編のようになるが、筆者からもう1つ。今度は「最低時給1000円」について問いかけてみたい。

一部報道によると、民主党は月内にも公表するマニフェストで最低賃金を全国平均で時給1000円とする数値目標を明記するという。詳細が明らかになっていないので、一昨年に行われた参議院選挙の前に明らかにされた最低賃金法の民主党案をみると、各地域の地域最低賃金は全国平均で1000円を目指すと記されている。

ただ、全国最低賃金については約800円を想定しているほか、施行後3年間で段階的に引き上げると明記されている点から、急に最低時給が1000円に上がるわけではないようだ。

筆者は学生時代、お金がないために学業を疎かにしてアルバイトを一生懸命やったクチだが、その時「時給が1000円あれば幸せな気分になれる」と思ったもの。それが実現するわけで、低賃金で働くアルバイト・パート従業員にとっては朗報だろう。しかし、雇う側にしてみれば、当然のことながらコストを圧迫するネガティブな要因となる。

実際、企業にヒアリングしてみると懸念する声が少なくない。外食産業では、人件費のアップを価格に転嫁する可能性が指摘される一方、製造業では国際競争力の観点から海外移転が加速し、国内産業の空洞化を引き起こすと心配する向きもいた。最低時給1000円は非現実的との指摘もある。

自動車産業のメッカである中京地区で部品を製造するある中小企業のオーナーは、最低時給が1000円になったら「工場をやめるしかない」と明かす。ちなみに、今度の総選挙については「民主党が政権を獲り、日本は変わった方がいい」としている。

このオーナーによると、中京地区で大手自動車メーカーの下請け業者は、時給800─850円で雇っているところが多いという。「ほとんどの工場が不景気で稼働率も落ち窮している。人件費の分を大手が単価に上乗せしてくれることなど、国際競争力を考えればありえず、時給1000円などとても払えない」──。

「子ども手当て」は子育てをしていない家庭から子育てをしている家庭へ所得移転させ、「最低時給1000円」は雇い主である企業が労働分配率を変える格好でそれぞれ行われる。「子ども手当て」が子育て家庭を、「最低時給1000円」は低賃金で働く労働者を、それぞれ支援する趣旨であるのは言うまでもない。

しかし、両者には決定的に違う点がある。「子ども手当て」は財政が絡んでくるのに対し、「最低時給1000円」に財政は介在しない。

時給引き上げのサポート体制を整えるとしても、保証枠拡大など融資スタイルではなく財政がバックアップし補助金でも支給しない限り、この「低賃金で働く人の生活を安定させるための支援」は企業に頼り切る対策とみることができる。「苦しい時は融資で給与を支払ったこともあった。これ以上、どうすればいいのか」──と別の中小企業の社長と話す。

企業にしてみれば「法制化されると従わざるを得ない」(ある外食産業の関係者)だろう。株主の要求に応えるべく企業は利益を上げるため、労務費の増加を何らかの形で吸収に動く。その結果、何が起きるのか──。この政策の意義、少し考えてみる必要があるかもしれない。

「特集 政局の行方」で最新関連ニュースをご覧いただけます)

(写真/ロイター)