ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年08月31日

308議席と成長ビジョン

Posted by: 水野文也

308議席は言い訳が許されない数字だ。

衆議院選挙は民主党の圧勝劇に終わったが、これは有権者の期待が大きいことに他ならない。期待を裏切るようであれば、厳しい批判にさらされる。

選挙戦の最中、民主党のマニフェストが修正された。農家の票を意識した日米FTA(自由貿易協定)問題が注目されたが、選挙の洗礼を受けた以上、今後はこのような「書き直し」は許されない。財源問題から公約の実行を不安視する声もある中で、着実に政策を実行することが求められている。

JAPAN-ELECTION/不安と言えば、選挙結果を踏まえてマーケット関係者にヒアリングしたところ、民主党が日本の成長ビジョンをどう描くか不安に思う向きが多かった。これは「書き直し」どころか、マニフェストの原案に明確な記載がなかったためとみられる。

市場では、次期首相となる鳩山由紀夫代表がその所信表明演説において、国の成長にどう言及するのか注目する声が高まっている。そこで確固たるビジョンが示されなければ、マーケットは早くも政権に「NO」を突きつける可能性もある。

鳩山代表が掲げる「友愛」は抽象的で、理解力に乏しい筆者は、そのフレーズが成長ビジョンにどう結びつくのかわからない。

しかし、はっきり言えるのは、国全体が富まなければ、示された政策の長期間にわたる実行に無理が生じてくる点だろう。「友愛」が経済政策にとって霞(かすみ)のようなものであるならば、将来に対する不安は一段と増す。

モルガンスタンレー証券・経済調査部長、ロバート・アラン・フェルドマン氏は「政治的合理性と経済的合理性は異なる」と指摘、これまで民主党は政権交代に力点を置く政治的合理性を優先してきた点から、新政権下で成長戦略が不在になりそうなことに危惧を示していた。

国の成長ビジョンについて明確に語るのは政権党の義務。この点も308議席の期待に当然のことながら含まれると思われるのだが──。

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(写真/ロイター)

 

 

2009年08月14日

「日本人をやめたい人々」

Posted by: 中川泉

最近、サラリーマンの間で「日本人をやめさせてほしい」というフレーズが流行っているという。

このセリフは、バブル時代に不動産ころがしで大もうけした某氏が、税務署に対して言った文句だが、今は、まじめに税や社会保障費を負担しているサラリーマンがつぶやく言葉だ。前回の景気拡大局面では、企業収益は拡大しても労働分配率は上がらなかった。税・社会保障負担感だけが増大し、将来への不安が募る中、思わず口をついて出るセリフだ。

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自民党政権下では、「所得再分配」は家計より企業に偏りがち、若い世代より高齢者に手厚く、働く人々への分配は手薄かったというのが多くの人の印象だろう。特にこの5、6年はそうした傾向が強まった。一方で、企業部門を中心にマクロ経済全体としては成長しているのだから、それでよしというのが自民党の発想だった。その間に、所得の問などで、国民年金や健康保険料の滞納がはびこり、最後にはまじめなサラリーマンまでが税・社会保険料の重圧で「日本人をやめたい」という気分が蔓延してしまったわけだ。
 
一方で民主党は、確かにこれまでなおざりにされてきた家計への所得再分配を厚くしようという新しい方向性を示し、これまでの歪みを修正しようという姿勢がうかがえる。

ただし、岡田幹事長が言うように「子育てのコストは社会全体でになう」となると、子供のいない世帯はコストだけ負担するような印象になりかねない。それでも子供のいない人達が、子育て支援のために重たい負担にも甘んじてきちんと納税するのは、将来への期待があるからだ。それこそが「成長戦略」にあたるわけだ。それがなくてはやはり「日本人をやめさせてほしい」という人は増えることだろう。

国家をになう政治家は、所得再分配で損・得の合計をゼロにするだけの存在ではない。公平なる「所得再分配」と、全体のパイを広げる「成長戦略」の両立を期待するのは、当然だろう。この国ではこれまでその二つがうまく両立できなかった。民主党は、その両立をはかるべく、11日に成長戦略を追加・修正した。その項目は消費拡大や農業での雇用創出、環境関連産業の支援といったもので、前者はいわば所得再配分がうまくいった場合の結果ともいえる。

それにしても、成長の過程ではどうしても所得分配は偏るものだろうか。公平な所得分配で高成長を遂げている国があるのだろうか。今度の総選挙では、自民、民主どちらが政権をとることになっても、少なくとも「日本人をやめたい」などと考える国民が増えないような政治を期待したいものだ。

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(写真/ロイター)

2009年08月10日

消費とアジアに着目する岡田幹事長

Posted by: 田巻一彦

JAPAN-ELECTION/OKADA民主党の岡田克也幹事長が10日、トムソン・ロイター主催の「ニュースメーカー」で講演し、総選挙で勝利して民主党政権が誕生した場合、どのような政策展開を目指すかを語った。

その中で目立ったのは、個人消費の復活と成長するアジアとともに豊かになるとの将来像の提示だった。

個人消費に関しては、年金・医療制度の改革で将来への不安を低下させ、消費意欲を高める方向に誘導するとともに、子育て支援などに代表される個人への給付で所得をかさ上げしていくことを強調した。

岡田幹事長は、講演前に行われたロイターニュースとのインタビューで、対米輸出をはじめとした先進国向け中心の輸出依存では、展望が開けないとの認識を示した。

その上で講演では、アジアとともに日本が豊かになる姿を描いていることを示し「アジア内需の考え方が重要だ」と述べた。

マニフェストに成長戦略がないと指摘されていたことを意識していたのか、この日の講演では、参加者からの質問に答えるかたちで、成長や日本経済の将来像を語ろうとしていた。

内需の足かせになる少子高齢化の対応では「どんどん人口が減れば、プラス成長は難しい。子育て支援で出生率を高めるといっても、経済に跳ね返るには20年かかる。しかし、あきらめるということではなく、出生率を上げる努力をしていくことが重要だ」と力説した。

ただ、岡田幹事長の講演を聞いていたエコノミストの一部からは「赤字国債をどの程度出すかなどの財源関連の話が、なおはっきりしなかった」との声も出ていた。

民主党政権がやろうとしている中味への理解度は深まってきている反面、実行可能性に関する疑問が残っているということだろうか。

自民、公明が執行中の2009年度補正予算の一部執行停止の可能性にもあらためて言及した岡田幹事長。「(政権を獲得して)具体的な成果を挙げないと、来年の参院選で支持されない」とも自ら言及し、新政権の発足後に厳しいテストが待ち受けていることを十分に認識していることも明らかにした。

30日の衆院選投開票まであと20日。有権者は、このチェック期間をどのように有効活用するべきだろうか。

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(写真/ロイター)