ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年04月17日

長期金利1.5%の壁

Posted by: 山口貴也

財政支出15兆4000億円、事業規模56兆8000億円に上る経済対策。過去に例をみない国債増発が発表になったが、今でのところ長期金利は上がってこない。

国債市場の関係者からはこんな声が聞かれるようになってきた。「追加対策は織り込んだ」──。

MARKETS-GLOBAL/新年度入り直後は金利上昇ピッチに勢いがあった。1.340%(日本相互証券1日引けベース)だった長期金利は、ほぼ1週間で1.430%(同7日引け)に上昇。6日の日中取引では一時1.475%を記録した。

ただ、参加者の話を総合すると「追加対策を織り込みにいった金利上昇ではなかった」らしい。

大手証券の関係者は「銀行が期初の益出し売りに動いたというのが実態で、追加対策を織り込み始めたのは8日以降」と指摘する。

8日以降の長期金利の推移はといえば、9日、10日と上昇したものの、10日に1.490%をつけてからは、むしろ低下基調をたどっており、先の関係者の話に基づくなら、7日引け値との差である0.06%(6ベーシスポイント)が、増発部分のプレミアムと言えそうだ。

今回、増発されるのは新規財源債と財投債で17兆円に迫るとみられている。2001年度以降の7年間としていた郵便貯金資金などによる財投債の一部引き受けの経過措置は時間切れとなっており、公的年金も今年度からこれまでの大口購入者の立場を降りそうだ。

新たな国債の大口の買い手はどうなるのか。この肝心の部分について、明確な答えを示してくれる市場関係者がいない。

もし、受け皿が出現しない場合でも「増発のプレミアムは6ベーシスポイント」と断言できるのか。心もとないと感じている市場関係者は、どの程度いるのだろうか。

(写真/ロイター)

2009年04月16日

次世代照明で「景気も明るく」

Posted by: 水野文也

JAPAN「第1回次世代照明技術展─ライティングジャパン─」が4月15日から東京ビッグサイトで開催されている。初日入場者数は1万9369人と大盛況。出展した218社のブースは、黒山の人だかりとなった。

ライティングジャパンの事務局によると「来場者は企業だけではなく自治体の関係者も目立つ。政策面からも環境にやさしい次世代照明が注目されている」という。LED照明器具をはじめ次世代照明は一般的な蛍光灯に比べて消費電力が少ないため、環境対策に取り組む企業などからニーズがある。

具体例を挙げると、照明器具大手の東芝ライテックが川崎市の大型商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」へ約2300台のLED照明器具を納入したが、これによって消費電力量を交換前に比べ約67%削減、年間約139トンの二酸化炭素削減に貢献できるという。

4月1日からエネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)が改正されたことも、次世代照明器具の普及を加速させる追い風となる。法改正により企業単位でエネルギー使用量を把握する必要になったため、フランチャイズチェーン店もエネルギー使用効率の改善に努める必要が出てきたのだ。

大手コンビニ店や外食産業の一角では、既に照明のLED化を進めているが、次世代照明技術展に大挙して企業や自治体などの関係者が押し寄せたことを踏まえると、今後、こうした動きが広がって行くのは想像に難くない。

当然のことながら、そこでは買い替え需要が発生する。LEDなど次世代照明器具は、環境にやさしいだけではなく、経済に浮揚効果をもたらすなど一石二鳥。「部屋を明るく、景気も明るく」──といった感じか。

(写真/ロイター)

2009年04月14日

どっこい生きていたアダム・スミス

Posted by: 児玉成夫

アダム・スミス──。ジョン・メイナード・ケインズとともに、史上、最も知られた経済学者である。自由な経済活動で利益を追求すれば「見えざる手」により、全体として経済はうまくいくという趣旨の国富論の著者でもある。
 
日本でも、「小泉・竹中構造改革」の下で、規制緩和による自由競争が是とされ、政府の経済への介入が不適切とされた時期には、彼も大いにもてはやされた。

しかし、昨年のいわゆるリーマンショック以後、どうも旗色が良くない。「小泉・竹中路線」が過剰な競争社会を作り出し、それが現在の格差拡大につながったとの見方が有力になるにつれて、彼の考えもタブー並みの扱いとなってしまった。景気下支えのため、世界的に財政出動の気運が盛り上がり、その重要性が再評価されつつあるケインズと対照的だ。

だが、各国の景気対策を兼ねた環境投資への高まりをみるにつけて、アダム・スミスの言う「見えざる手」の存在を感じているのは筆者だけであろうか。

USA/地球全体が深刻な環境悪化に直面していたにもかかわらず、世界景気が比較的順調だった時は、環境よりも経済成長を優先する空気が強かった。原油価格が上昇すると、省エネ・代替エネルギーへの取り組みが盛り上がりを見せるものの、下落すると一気に熱が冷めるという、いたちごっこの繰り返しだった。

しかし、世界的好景気が「見えざる手」により「強制終了」されてしまった後は、環境への対応も徐々に本格化しつつある(討論X闘論・4月10日「財務省の屋根」)。政府の今回の追加経済対策でも、省エネ家電やエコカーの普及、太陽光利用への具体策が示された。

アダム・スミスの「見えざる手」については、需給曲線を説明したものとされているようだが、今回の世界的バブルの強制終了と環境問題への本格対応のような動きまでを見通していたとすれば、恐るべき慧眼(けいがん)と言わなければならない。

アダム・スミスは1723年に生まれ、1776年に国富論を著した。1723年といえば、日本では、好景気に踊った元禄時代が終わり、8代将軍吉宗が財政引き締め(享保の改革)を断行していた時期とほぼ重なる。1776年は米国独立宣言の年でもある。

第2次世界大戦後も有力な経済学者が多数輩出したが、アダム・スミスはケインズと並んで今なお、圧倒的な存在感を維持している。

歴史は繰り返す。経済政策論議からの彼の「引退」は当面無さそうだ。

(写真/ロイター)