ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年04月15日

米国による時価会計基準緩和の功罪

Posted by: 田巻一彦

MARKETS S&Pゴールドマン・サックスウェルズ・ファーゴなどの2009年第1・四半期決算が好調だ。米株式市場は、それぞれの決算発表直後に好感し、相場全体もいったん上昇した。

だが、2つの金融機関は明言していないが、この決算好調の背景に「時価会計基準の緩和」の効果が働いているのではないか、との見方が金融市場でささやかれている。

米財務会計基準審議会(FASB)は今月2日、時価会計基準の緩和を決めたが、適用時期に関しては、第1・四半期決算からでも可能とされた。

米国の金融市場動向に詳しいある国内市場関係者は、時価会計基準が緩和されたことで「米金融機関の経営の実態が、市場参加者の目から隠されることになった」と指摘する。その上で「適切な投資行動を市場の参加者が行える前提は、正確な情報の開示だ。現在の市場混乱の根本にあるクレジット市場を中心にした損失の実態を隠したままでは、投資家に不利益になる」と述べている。

米市場関係者の中にも「米銀がゾンビ企業だとのイメージを強めるだけだ」との批判がある。

一方で、時価会計基準の緩和は、株価の急落を回避し、実体経済が回復するまでの時間を稼ぐメリットもあるという“擁護論”も、市場には存在する。米国による時価会計基準の緩和は、やむを得ない措置だったのであろうか。

(写真/ロイター)

2009年03月18日

危機モードの日銀

Posted by: 田巻一彦

FINANCIAL/JAPAN日銀の政策が積極さを増している。17日に大手銀を対象にした劣後ローンの引き受けを決めたのに続き、18日には長期国債の買い切り額を月間4000億円増やし、1兆8000億円にすることを決めた。

劣後ローンは、返済順位が低いため、対象銀行が破たんすれば、日銀の損失に直結する。伝統的な中央銀行の政策から一歩踏み込んだ対応と言える。

長期国債の買い切りについて、金融危機以前の日銀は、増額には消極的だった。財政の膨張を中銀が見境なくサポートすれば、いずれインフレの芽が膨らんで、物価上昇が激しくなるリスクが高まるとみていたからだ。

だが、米サブプライム(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題を起点にした金融危機は、世界の金融システムを大混乱に陥らせ、大丈夫と思われた日本の大手銀も、株価下落という現象を通じて、自己資本比率の低下と貸し渋りという問題を抱えることになった。

他方で、実体経済の落ち込みも深刻になり、大規模な財政出動がこの先で予想される中、先手を打って市場の予想を超す規模で長期国債の買い切り増に踏み切った。

「長めの金利低下を事実上、促すことで少しでも金融緩和を経済に及ぼしていこうという狙いがある」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏)との声もあり、日銀の積極姿勢が目立つ。

これまで日銀は「受け身」、「小出し」などの批判を受けることが多かった。だが、ここに来て果敢な対応が目立つのは、それだけ白川方明総裁以下の日銀メンバーに危機感が強いためだろう。

幸い、足元の株価は復調傾向だが、この基調が継続すると見ている市場参加者は少数だ。日銀自身が株価の先行きに強い懸念を持っている可能性があり、さらに政策対応する準備に入っている可能性が高い。

次に繰り出すカードは何だろうか。

(写真/ロイター)

2009年02月02日

急降下する鉱工業生産と株価

Posted by: 田巻一彦

industrial output and stock market

鉱工業生産が急降下している。12月の下げ幅が過去最大になっただけではない。予測値でみた今年1月、2月は下げが加速し、1─3月の生産は10─12月比でマイナス20.3%と急降下する。戦後最大の危機的状況に直面したと言える。

市場でも、さすがに厳しい声が広がり始めたが、輸出産業が直面している厳しい状況を株式市場は、本当に織り込んでいるのだろうか──。

マクロ経済の分析に詳しいある市場参加者によると、生産の大幅な減少は輸出企業の売上高の大幅な減少に直結する。ほとんどの輸出企業で損益分岐点を下回って売上高が落ち込み、赤字に転落。売上高の水準は2008年を基準にすると2009年は20%減の水準になる、という衝撃的な試算をしている。

自動車の例を出すまでもなく、輸出企業の裾野は広い。20%マイナスのインパクトは時間差を伴って、日本中に広がるだろう。

自動車の下請け企業の一部では、1週間のうちに休んでいる日が、操業していている日よりも多いという事態も発生している。

背景に世界的な需要の減少という問題が控えているだけに、根本的な解決には、相当の時間と手間がかかりそうだ。だが、短期的な鎮痛剤投与と最低限のセーフティーネット構築は、早急に取り掛かる必要がある。

戦後最大の危機であるにもかかわらず、その危機に対応するための明確な指針や新しい時代の方向性を指し示す声が、政府サイドから聞こえてこないと感じるが、どうだろうか。