ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年10月19日

米銀決算から見える消費低迷の未来

Posted by: 田巻一彦

Bank of America 前週までに発表された米銀決算の結果を見ると、いずれもバンキング部門の苦境が目立つ。トレーディング部門や投資銀行業務の収益でカバーできたゴールドマン・サックスJPモルガンの決算は市場予測を上回ったが、バンカメの赤字は予想より拡大した。

この結果から何が見えてくるのか──。銀行のクレジットコストは上昇傾向を続けており、その大きな要因は個人の信用劣化だ。バンカメが被った消費者クレジットの損失拡大はその典型といえる。

米国の家計は14兆ドル台の借金を抱え、同時に失業率も上昇している。このままの傾向が続けば「米銀のクレジットコストは、ある段階から急激に増加するリスクに直面する」(邦銀関係者)とみられている。

そうした中で「米国の個人消費や米企業の設備投資が、リーマンショック以前の水準に簡単に戻ることは考えられない」(外資系証券)という見方がじわじわとマーケットに広がってきた。

対米輸出比率の高い企業は、2010年にかけて高い売り上げの伸びを期待できない公算が高まっている。マクロ的にみても、対米輸出が伸びないなら、この先の高い成長を短期的に望むことは難しい。

過剰流動性を背景に株式市場は、新興国のマーケットを中心に上昇を続けているが、米経済に代表される「伸びきれない経済」の実態が多くの市場参加者の目に明らかになったときに、新しいマーケットの流れができるような気がするが、多くの方々の意見を伺いたい。

(写真/ロイター)

2009年06月23日

世銀とIMFと米経済

Posted by: 田巻一彦

ECONOMY-ZOELLICK/世界銀行が22日に発表した2009年と2010年の経済見通しで、09年の世界経済や米国はじめ主要国の成長率が下方修正され、同日の米株は大幅に下げた。

東京市場の取引時間中に発表されたにもかかわらず22日には反応せず、米株の下落を受けて23日午前の日経平均が300円以上も下げたのは「主体性のない東京株式市場の本質をさらけ出した」(国内証券の関係者)とも言えるが、米株市場も迷っているのではないか。

USA/

先週、国際通貨基金(IMF)が09年と10年の米経済見通しをそれぞれ4月時点から上昇修正し、リプスキー筆頭専務理事が10年の世界経済・成長見通しを上方修正する可能性があるとの見解を示していたからだ。

ギャップが生じている世銀とIMFの見通しのどちらが正しいか──。「神のみぞ知るですね」(外資系証券)との声がマーケットの本音だろうが、足元の生産減少の緩和に視点を置くIMFの見方が現実化するのか、それとも大きな陥没をみせている世界経済は、09年にはかえってマイナス幅が拡大していくのか。

ある邦銀関係者は「米株の期待先行度は、日本株に比べて高い。日本のGDPは4─6月に前期比・年率で2%台のプラス成長が期待できるが、米国のプラス転換は早くて10─12月期だろう。その基盤の弱さが、悪い材料への反応の大きさにつながっている」とみる。

米経済を予測する場合、もう1つ見逃せないのが金融システムの機能不全だ。19日の投稿へのasagao777さんのコメントの中に指摘されていたように、不良債権の最終処理には相当のコストがかかる。ところがどうも、米銀はそれを忌避しているようにみえる。

米銀動向に詳しい別の外資系証券関係者は、公的資金を返済した10の米銀の本音は「不良債権処理の先送りにある」と指摘する。公的資金さえ返済すれば、不良債権の処理で米当局からとやかく言われることはない。時価会計基準が棚上げされ、処理しなければ不良債権問題で、新たな損失は出ない。しかし、処理すれば処理損が発生し、自己資本をき損することになるため、景気が上向くまでこのまま不良債権を塩漬けにする──という戦術だというのだ。

しかし、これが本当なら、資金需要が盛り上がり始める景気回復時に金融面からサポートできないリスクが発生する。銀行が貸せないので企業は投資できず、景気が失速する、というシナリオはそれなりに現実味があると思うが、どうだろうか。

(写真/ロイター)

2009年05月11日

ストレステストの信ぴょう性

Posted by: 田巻一彦

USA/米当局が実施したストレステスト(健全性審査)の結果が7日夕(日本時間8日朝)に発表され、8日の米株市場は上昇した。市場では、一部米銀の国有化リスクが低下したと受け止め、米金融システムの正常化に向けて一歩前進したとの声が出ていた。

だが、マーケットに比べて米国の報道の中には、このストレステストの結果の信ぴょう性を問う論評が目立った。米連邦準備理事会(FRB)と米銀との間で不良債権額の見積もりで相当のかい離があり、FRBが銀行側に折れて、必要な資本注入額は相当に減らされたと指摘した記事もあった。

また、今回のストレステストで前提とされた2010年3月に失業率が10.3%に上昇するとの仮定についても「年内にブレークしてしまう可能性がある。甘い前提に立っている」(外資系証券の関係者)との声も出ている。

さらに議論の前提に使われた2009年1─3月期の決算内容に関しても「負債評価益のような会計上の操作でかなり上乗せされているとみられ、それを前提に出された数字である以上、かなり甘い内容になっている」(邦銀関係者)との指摘も出ている。この負債評価益に関しては、ロイターコラム(5月8日付)で真壁昭夫・信州大教授も指摘している。

東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は「今回の結果の信ぴょう性について、市場では100%がイエスと言っているわけではない」と述べる。複数の市場関係者は、ガイトナー米財務長官が結果発表前に米銀の中に債務超過はないと発言するなど、市場が大きく崩れない方向に誘導する姿勢が鮮明だったと話す。

結果的に米当局に残されているTARP(不良債権救済プログラム)の中の1360億ドルの公的資金の範囲内に、当局からの資金注入額が収まるよう「ストレステストの結果が操作されたという思惑が、マーケットの一部でささやかれている」(先の外資系証券の関係者)という。

株価は上がり、市場のセンチメントも好転して、全員がハッピー──。ストレステストの結果が、実態をそのまま映しているなら、そうなるだろう。だが、違うなら資本注入されても米銀の貸出は増えず、公共投資の増加分が使い果たされた後には「米景気の二番底が待っているということになりかねない」(国内証券の関係者)という予測通りの展開になる。

1360億ドルを使い切ったころに、大きなストレスが米国だけでなく世界経済にかかる可能性があるとみているが、杞憂に終わるだろうか。

(写真/ロイター)