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2009年07月03日

保守政治への回帰目立つ東アジア

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

永野 護 名古屋市立大学大学院教授、三菱総研客員研究員

経済危機後の欧州では、保守系、中道右派政党への支持が強まり、逆に左派勢力の退潮が鮮明となっている。東アジアはどうなのだろうか。

昨年以降、東アジアで誕生した新政権を見てみると、韓国・李明博ハンナラ党政権、台湾・馬英九国民党政権、マレーシア・ナジブUMNO(統一マレー国民組織)政権と、やはり東アジアも欧州同様、保守政治への回帰が進んでいる。

この10年間、東アジアでは、開発独裁、クローニーキャピタリズムの打破を目的として、経済改革を進める左派革新政権が有権者の支持を得てきた。しかし、経済危機後の有権者の選択は、市場経済化よりも、財政拡張による所得下支えを行う政治に支持が集まっている。

最近のASEAN(東南アジア諸国連合)主要国は、国内投資の頭打ちが顕著である。これは1990年代にインドネシア、フィリピン、タイへ進出した外国企業が、さらなるコスト効率を求めてベトナムや中国内陸部などへ向かったことに起因する。国内投資が低迷するため、成長を外需に過度に依存し、輸出企業が多い都市部に富が集中した経緯がある。

今後の東アジアは、主として地方都市での国内投資を刺激する経済政策が採用されてゆくだろう。この縁故資本主義が再発しかねない大きな政府の下で、政権交代が可能な民主政治を育むという、難題に取り組むことになる。

全文は、こちらでご覧になれます。

*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年01月20日

「百年に一度」と「全治3年」の矛盾

Posted by: 田巻一彦

米国発の金融不安は「百年に一度」の世界経済危機へと発展し、その大波はいよいよ日本にも打ち寄せてきた。

「百年に一度」と「全治3年」の矛盾

震源地の米国では、オバマ次期大統領の強いリーダーシップの下に、総額8250億ドルの景気刺激策を法案化した。400万人の雇用創出をうたい、景気の底割れ回避に全力を挙げる姿勢だ。

この経済対策の財源のかなりの部分は、米国債の発行で賄われるとみられる。米財政赤字は、空前の規模に膨れ上がるが、オバマ次期大統領は「財政赤字の悪化」よりも「景気の建て直し」を優先したといえる。政策の優先順位ははっきりしている。

一方、輸出と設備投資という2大エンジンが失速し、戦後最大の落ち込みを覚悟する事態になった日本でも、麻生太郎首相が「百年に一度」の危機であることを強調し、2008年度第2次補正予算案と09年度予算案の早期成立の必要性を強調してきた。

だが、空前の規模の景気対策を打ち出し、マクロ経済対策を定石通りに打っていくスタンスを明確にしたオバマ次期大統「百年に一度」と「全治3年」の矛盾領に対して、麻生首相は、景気回復を前提に11年度の消費税引き上げにこだわっている。

政府は09年度予算案の関連法案として提出予定の税制改正法案の付則に、11年度からの消費税率引き上げ方針を明記する方向だ。

麻生首相の想定通りに「全治3年」で景気が回復すれば、増税で財政悪化に歯止めを掛けられるという作戦のようだ。野党が反対している2兆円の定額給付金を実施する理由として、麻生首相は消費への刺激効果を挙げている。

しかし、近い将来の増税を政府が掲げていて、果たして消費を喚起できるだろうか。マクロ経済政策の実施には、アナウンスメント効果の利用が欠かせない。一国のリーダーがこれから進むべき道と政策手段を明確にし、国民がそれに共感することで政策効果を高めるという、この効果を無視して、大不況を乗り切れると判断しているなら、事態を甘く見ていると言えるのではないか。

自民党内でも、11年度の消費税引き上げに異論が噴出している。09年9月に衆院議員の任期を迎え、仮に麻生首相が解散できなくても今年中に総選挙が行われる。「増税」を掲げた選挙は負けるとの議員心理が透けて見えるが、「増税を予定して消費は喚起できない」という反対派議員の主張には、党利党略だけで片付けられない要素がありそうだ。

「百年に一度」の危機なのに、今から「全治3年」の景気回復を前提に増税を掲げるのは気が早い気がする。二兎を追うものは一兎をも得ず──。「景気底割れの回避」か「財政悪化阻止」かは難しい問題だが、あなたが首相なら、どう決断するだろうか。

(写真/ロイター)