ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月06日

自民党はどこへ向かうのか

Posted by: 吉池威

tanigaki政権交代で見直しが決まった日本郵政の新社長に元大蔵事務次官の斎藤次郎氏が就任すると聞いて、多くの有権者は、政権公約(マニフェスト)と「違う」と感じたのではないか。

人事院人事官に前厚生労働次官の江利川毅氏を充てる人事を国会の同意案件にする方向でもあり、相次ぐ官僚OBの起用で民主党がこれまで主張してきた「脱官僚依存」は、政権発足からわずか2カ月も経たずに看板倒れになったとの印象を与えている。

財源、基地、ダム、年金など、総選挙で掲げたマニフェストと現実とのギャップの大きさがクローズアップされてきた。9月に発足した鳩山由紀夫内閣の中では、郵政民営化の見直しで豪腕ぶりを発揮、意気揚々とする亀井静香郵政・金融担当相を除き、各閣僚は憔悴しているようにも見える。

だが、2大政党制になった今、有権者は公約を守らない民主党に見切りをつけ、次の国政選挙で自民党支持に回るかといえば、世論の動向はそう単純でもなさそうだ。10月25日の参院神奈川、静岡両補選は、いずれも民主党新人が当選、党の再生を急ぐ自民党候補を退けた。

民主党は2003年ごろから、議員や党職員が独自の調査に基づいて政府が提出した予算の対案を提示してきた。当時は野党だったため財務省の記者会見室の利用も許されず、財務省記者クラブなどで対案に関するブリーフを開いていた。脱官僚をすでに意識し、今の政策を地道に練り上げてきたのだ。官僚の大きな協力を得て政策を作成してきた自民党の議員が、立場が変わったからといって野党時代の民主党議員のように手作りの政策を簡単に打ち出すことができるとは考えにくい。

せっかく2大政党制になったにもかかわらず「与党がだめなら野党に」という仕組みになっていない。来年の参院選で振り子を戻すのは難しいとの諦観が自民党内にもある。

ある前衆院議員は、今後連立与党の予算編成で内部分裂が起こり、民主党が自滅するとみている。「その時までにこれといった政策を打ち出せなければ、そのときは自民党が本当にだめだ」と話す。「だめだ」とは言っても、党内に新党立ち上げのエネルギーはなく、政界再編シナリオも立ち消えとなった。今後に向け特定の「空想」「妄想」もわいてこないが、それでも野党・自民党の復活を願う声はあるはずである。歴史はまだ始まったばかりなのだから。

(写真/ロイター)

2009年08月31日

民主党勝利で何が「Change」するのか

Posted by: 西山誠慈

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衆院選において民主党が300議席以上を獲得する圧勝で、政権の座に就くことになった。

選挙戦では、民主党が掲げた子ども手当てやそれをめぐる財源の問題が注目されたが、選挙結果について、落選した自民党候補と当選した民主党候補が共に同じ要因を挙げていた──最大の要因はこれまで続いてきた自民党政権に対する批判だと。

自民党候補は、それにより政策を訴えても有権者に聞き入ってもらえなかったとし、逆に民主党の候補は、今回の勝利は民主への支持よりも自民への批判によるものだと自らを戒めていた。

共和党と民主党による2大政党制が定着し、政権交代が定期的に起こる米国に比べ、日本では1955年の結党以来ほぼ一貫して政権与党であった自民党が下野するのは、93年の細川護熙内閣誕生以来、たったの2度目である。

次期首相になる鳩山由紀夫民主党代表は選挙期間中、アメリカでのオバマ政権誕生になぞらえて、日本にも「Change」が必要と訴えてきたが、この政権交代で我々の生活にどのような変化が起きるのだろうか。

「総選挙特集」で最新関連ニュースをご覧いただけます)

(写真/ロイター)

2009年08月14日

「日本人をやめたい人々」

Posted by: 中川泉

最近、サラリーマンの間で「日本人をやめさせてほしい」というフレーズが流行っているという。

このセリフは、バブル時代に不動産ころがしで大もうけした某氏が、税務署に対して言った文句だが、今は、まじめに税や社会保障費を負担しているサラリーマンがつぶやく言葉だ。前回の景気拡大局面では、企業収益は拡大しても労働分配率は上がらなかった。税・社会保障負担感だけが増大し、将来への不安が募る中、思わず口をついて出るセリフだ。

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自民党政権下では、「所得再分配」は家計より企業に偏りがち、若い世代より高齢者に手厚く、働く人々への分配は手薄かったというのが多くの人の印象だろう。特にこの5、6年はそうした傾向が強まった。一方で、企業部門を中心にマクロ経済全体としては成長しているのだから、それでよしというのが自民党の発想だった。その間に、所得の問などで、国民年金や健康保険料の滞納がはびこり、最後にはまじめなサラリーマンまでが税・社会保険料の重圧で「日本人をやめたい」という気分が蔓延してしまったわけだ。
 
一方で民主党は、確かにこれまでなおざりにされてきた家計への所得再分配を厚くしようという新しい方向性を示し、これまでの歪みを修正しようという姿勢がうかがえる。

ただし、岡田幹事長が言うように「子育てのコストは社会全体でになう」となると、子供のいない世帯はコストだけ負担するような印象になりかねない。それでも子供のいない人達が、子育て支援のために重たい負担にも甘んじてきちんと納税するのは、将来への期待があるからだ。それこそが「成長戦略」にあたるわけだ。それがなくてはやはり「日本人をやめさせてほしい」という人は増えることだろう。

国家をになう政治家は、所得再分配で損・得の合計をゼロにするだけの存在ではない。公平なる「所得再分配」と、全体のパイを広げる「成長戦略」の両立を期待するのは、当然だろう。この国ではこれまでその二つがうまく両立できなかった。民主党は、その両立をはかるべく、11日に成長戦略を追加・修正した。その項目は消費拡大や農業での雇用創出、環境関連産業の支援といったもので、前者はいわば所得再配分がうまくいった場合の結果ともいえる。

それにしても、成長の過程ではどうしても所得分配は偏るものだろうか。公平な所得分配で高成長を遂げている国があるのだろうか。今度の総選挙では、自民、民主どちらが政権をとることになっても、少なくとも「日本人をやめたい」などと考える国民が増えないような政治を期待したいものだ。

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(写真/ロイター)