ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月18日

見えない米利上げ時期

Posted by: 田巻一彦

G20/バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が16日、現在の超金融緩和政策を長期間継続するとあらためて述べたことで、外為市場ではドル・キャリートレードが活発化してきた。

米市場では、ついこの間まで「出口が近いのではないか」との思惑が台頭していたが、マーケットセンチメントは様変わりだ。

私は10月15日の投稿で、コーンFRB副議長の発言を引用しながら、米国でも超金融緩和の出口政策発動は、かなり先になる可能性を指摘した。

FRBがその後に発信してきたメッセージは、ほぼその通りだった。16日のバーナンキ議長の発言の中にも「FRBは雇用の伸びと物価安定の双方にコミットしている」と述べた。出口がいつかを予想する上で、この発言が大きなポイントになりそうだ。

つまり、上昇を続けて10%台に乗せた失業率がどこで頭を打つかが1つの課題だが、9-10%台でウロウロしている段階では「雇用の伸び」にコミットしているFRBが、利上げ方向に動くの難しいと見るべきだろう。

現在の米市場は、来年秋ごろの利上げを見込んでいるが、その時までに米雇用情勢の改善が明確になっている保証はない。厳しい雇用情勢を反映して個人消費が振るわない状況が継続すれば、来年いっぱいの政策金利据え置きの可能性もかなり高いのではないか。

もう1つ、米市場が余り注目していない点がある。それは米金融システムの復活度合いだ。米銀の多くは、確かに公的資金を返済し、正常化に向かっているように見える。しかし、肝心の貸し出しは、全く伸びていない。金融仲介機能は不全状態が継続している。

「資金需要がないからだ」と、どこかの国でのできごとのような反論が出てくるかもしれないが、資本市場での資金調達の回復ぶりなどをみれば、そうではないと言えると思う。

米市場関係者の多くは否定的だが、金融機能不全と実体経済の低迷が絡み合いながら、低成長が継続するという日本の「失われた15年」と似た状況が現出するのではないかと思えてならない。

(写真/ロイター)

2009年11月05日

米超金融緩和策の長期化

Posted by: 田巻一彦

USA-FED/BERNANKE米連邦公開市場委員会(FOMC)が4日に公表した声明文では「FF金利を長期間、異例に低い水準とすることが正当化される可能性が高いと引き続き予想する」との文言を修正しなかった。

一部の米紙報道をきっかけに、いったんは米市場でFRBが超金融緩和策からの出口を模索するのではないかとの思惑が広がったが、この声明文の発表を受け、FF金利先物2010年7月限は上昇し、2010年上半期まで利上げはないとの見方に傾いた。

声明文では、「雇用喪失の継続、弱い所得の伸び」などが指摘され、実体経済の弱さを率直に明らかにした。10月15日の投稿でも明記したように、失業率の上昇が継続している間に利上げに踏み切った例はない。失業率の上昇が頭打ちになっても高止まりが継続すれば、利上げのタイミングを模索するのは難しいだろう。

米雇用情勢や所得環境を展望すれば、米市場はいずれさらに実質ゼロ金利の想定期間を延長させ、2010年末までは「利上げなし」に傾くのではないかと思う。

日銀の白川方明総裁は4日に行われた講演会で、世界経済がバランスシート調整に直面し、「その間は、経済に対し下押し圧力がかかり続けることを認識する必要がある」と述べたが、まさにそのとおりの展開になるのではないか。

家計と企業、金融機関のバランスシート調整が長期化して「失われた10年」を経験した日本の中銀総裁にとって、この先の展開は「既視感」(デジャブ)を伴うことになりそうだ。

超金融緩和が長期化すれば、2日の投稿でも述べたように、緩和を実施した国以外にリスクマネーが流入し、そのマーケットはバブル化する可能性が高くなる。実際、金価格は史上最高値を更新し、アジアでは香港、シンガポールの不動産価格が急上昇している。

21世紀型のマネーのうねりが大きくなってきている。

(写真/ロイター)

2009年11月02日

白川総裁が指摘した経済現象 

Posted by: 田巻一彦

USA-FED/10月30日の日銀金融政策決定会合やその後の白川方明総裁の会見で、国内外のメディアの多くはCPや社債を対象にしたオペの打ち切りや、デフレと超金融緩和策の長期化の見通しに多く言及したが、ロイターの速報以外では全く触れられていない部分があった。

白川総裁は、世界経済の先行きに関する質問に答えた中で「先進国の金融緩和で供給された資金やリスクテークの能力が、(中略)新興国の経済を押し上げている」「したがって先進国と新興国を結ぶ1つの大きなリンクは、先進国の金融緩和が、染み出したという言葉がいいのか悪いのかわからないが、影響していることだと思う」と指摘した。

先進国の金融緩和が、新興国の経済上振れに影響を与えているとの指摘だ。

同じような質問に対し、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、10月19日に米カリフォルニア州のサンタバーバラで、先進国の金融緩和効果が新興国に波及したかどうかには言及せず、アジアで発生する可能性のある資産バブルについて懸念を表明。過剰な貯蓄を抑制し、消費を促進するべきであると述べていた。

他の中銀首脳も、この問題のメカニズムに関し、明確に指摘したことは、今までのところない。

一国の金融政策が、マネーのグローバル化に伴って、その効果が自国内で出ないうちに海外で、その当局の想定とは異なって影響が出る可能性があるとの見方は「一部の当局者の中で、水面下で認識されている」(国際金融筋)という。

その認識をさらに推し進めていけば、各国ごとに中銀が別々の金融政策を取った場合、政策効果が意図しない場所で、意図しない形で出てくるという指摘も、国際金融を専門に見ている人たちの中では、問題として意識され始めている。

しかし、この問題を解決するような新しいシステムを構築しようとの動きは全くなく、今週末に開催されるG20でも、そうした視点にたったアクションが取られる可能性は今のところゼロだ。

だが、白川総裁が率直に指摘したように、米、欧、日など先進国の中銀が実施した金融の超緩和策の効果が「染み出し」というかたちで新興国に出てきたことは、間違いないだろう。この現象を正直に認め、先行きのマクロ政策を議論することはできないのだろうか。

白川総裁の指摘が、主要な中銀やG20などの場で、積極的に議論されるような展開を望みたいが、現実離れとのおしかりを受けるだろうか。

(写真/ロイター)