ロイターブログ

討論×闘論

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2009年11月17日

高まる無国籍通貨「ゴールド」への関心

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

亀井幸一郎 マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 金属・貴金属アナリスト

金価格の上昇が続いている。今回の特徴は、静かな上値追いという点にある。

それでは、なぜこうした相場展開となっているのだろうか。年始以降、ここに至る金価格の上昇は、投資需要の記録的な増加によってもたらされてきた。1─3月期に見られた大手ヘッジファンドによる金ETFの集中買いに始まり、その後は世界的なスクラップ(金製品の売り戻し)のこれまた集中的な売りを継続的な投資マネーの流入が吸収するという経過をたどってきた。

その間にNYコメックスでは、ファンドによるネットの買い建て玉(ネット・ロング)が重量換算にして概ね500─600トンという高水準を維持してきた。先物市場での600トン近いネット・ロングは、これだけの規模の将来の売り要因を抱えていることを意味し、過去の経験則では内部要因からみて、これだけで十分な反落要因といえる規模である。

ところが、今回9月に至る価格展開は、この高水準のネットロングを抱えながら、比較的安定した900ドル台前半でのレンジ相場を繰り返してきた。既にこの段階で、従来相場との質的な違いを示していたのである。

投資需要急増の背景は、米国の金融政策とそれを映すドル安見通しである。米連邦準備理事会(FRB)によるゼロ金利政策と超ド級の量的緩和策、オバマ政権が採った史上最大の財政出動策を受け、過去最大に膨れ上がった財政赤字は、今後複数年にわたり記録的水準を続けるとみられる。

昨年秋のリーマン・ショック後に高まった信用リスクのない金への見直しの動きは、機関投資家のみならず個人富裕層を巻き込んだ大きな流れになっているのだが、それは投資対象としての安全性を求めるという側面の強いものだった。

一方で、インドや中東を中心とする宝飾品など実需は激減しており、10月末までの速報値でインドの金輸入は153トンとされている。前年同期は387トンとなっており半分以下の水準まで落ちているわけだ。ちなみに2008年は452トンだった。

実際に9月に1000ドルを超えてからの展開は、常に警戒感を伴った上昇となっている。いわゆる活況に「沸く」という状況にはない。また、警戒するばかりに上昇相場に乗り遅れた投資家が多く、下げ局面を待つのだが思う水準までは下がらず、時間の経過とともに買い値を切り上げるという展開になっている。先行した投資家は、利益確定の売りを断続的に出すのだが、それらはこの「出遅れ組」が拾うという展開になっている。

金融市場からの資金流入の裏にあるのは、ドルを中心にした低金利、カネ余りにある。ドル安を上昇のテコにしているのは「カネが余っている=通貨価値の劣化」だからこそ「基軸通貨ドルではなくゴールド(代替通貨)」という流れといえる。

昨年秋の欧米を中心とする金融危機の中で、資産としての認知が進んだ金。金市場が立ち上がって35年の中で、その通貨性に急速に光が当たり始めている。「国籍のない通貨」とも呼ばれる金が、その無国籍性ゆえに注目を集めるのは、グローバル化時代の金融危機ゆえのことだろう。そしてドルを中心とした管理通貨制度自体が曲がり角にきたことの証でもある。

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*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年11月09日

リスクマネー流入で変化する商品市場

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

sugata三菱商事フューチャーズ 調査・マーケティング室室長 菅田 修司

リスクマネーの動きが活発化している。ただ、資金フローの活性化は歓迎されるべきことだが、コモディティ市場においてはWTI原油相場が期近ベースで昨年10月初旬以来の80ドル台の高値に値を上げるなど、需給面よりも金融商品市場(有り体にいえば投機主導)としての色濃さが増しており、偏った資金の集中、その結果の上昇スピードの加速等は決して喜ばしいこととは言えない。

ドル安基調の継続との前提に立つと、コモディティ市場全般の強含みの展開も続く可能性が高い。ポイントは、トレンドがより明確な市場に資金は流れやすいという傾向だ。

NYMEX・WTI市場における10月中の1日当りの平均出来高は約59万枚。1コントラクト(枚)=1000バレルであり、数量換算すると5億9000万バレルが日々取引されていることになる。

世界の1日当りの推定原油消費量は約8400万バレル(IEA)。コモディティ相場と向き合う市場関係者の間では、昨今の相場の変動について金融商品としてのウエートが高まり、株式や特定の通貨との相関性が極めて高く、一方で需給等の独自のファンダメンタルズ面から現状の価格及び今後の展開を推し測るのは難しいとの見方が多々聞かれるが、上記のNYMEX・WTIの取組内訳の面からも見てとれる。

よって、今後のコモディティ市場全般の動向を占う上では、市場センチメントやリスク指向の上昇/低下が引き続き主たるポイントとなろう。すなわち上昇局面においては、強い経済指標や景気回復観測等から来る先高期待感の高まり、リスクマネーのフローの活性化等が支援材料となり、一方の下落局面は弱い経済指標やリセッションに対する警戒感、景気に対する悲観的な見通しからくるリスクマネーの圧縮が圧迫材料となる。

また、中でもトレンドが明確なものに資金が流入しやすい反面、いったん調整となれば調整値幅も相応のものとなる点には注意を要する。

上昇後のもちあい圏においては、次なるトレンドの見極めが焦点となっている裏で、実はいかに自身の持つポジションを市場から有効に離脱させるかといった心理戦の様相も呈しており、ボラティリティ低下の一方で、市場は極めて神経質な状態にある。

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*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。

2009年10月21日

金融市場化した商品市場

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

emori江守 哲 アストマックス 運用部 ファンドマネージャー

今年に入ってからのコモディティ市場の動きに対し、筆者が20年間培ってきた「コモディティ市場における経験やノウハウ」の正当性について、疑問を感じる局面が極めて多くなっている。このように感じるのは、コモディティ市場が「ほぼ完全に」金融市場化したことが背景にあると考えられる。

最近のコモディティ価格の動きを見る限り、従来のような実需家の行動によって価格が形成されてきたパターンは見られなくなり、コモディティ価格の形成経路はすでに実需家の手から離れ、金融市場での取引を主体とする市場参加者に移ったともいえる状況にある。

そもそもコモディティ市場では「投資=買いのみ」という考え方が、これまでほとんど存在してこなかった。例えば、投機的取引で収益を上げる際、株式市場であれば基本的には現物株を購入し、株価の値上がりを背景に資産増加を狙うのが基本である。

しかし、コモディティの場合には、金などの一部の銘柄を除いて現物に直接投資することはほぼ不可能である(少なくともこれまでは)。したがって商品投資顧問業者(CTA)などが、先物市場を利用して買いまたは売りポジションを構築し、値動きを捉えて収益を獲得するというのが基本的なスタイルであった。

このように現物市場が価格の裏づけとなるコモディティ市場が金融市場化(=株式市場化)する動きが加速し、現物市場の需給バランスから見た理論値から大幅にかい離する状況が長期間続くことにも強い違和感がある。

さらに需要家はこれ以上の価格上昇局面が続けば、収益に大きな影響が出ることから、一定量の買いヘッジを実施せざるを得ないが、生産者は価格上昇が見込めると考え、売りヘッジを出してこない。先物市場では、買い手と売り手のポジション量は常に一定だが、このようにフローの面では買い注文が先行して入りやすい状況にあり、これが必然的にコモディティ価格の水準を押し上げる要因にもなっている。

このような状況をいかにして利用し、収益を上げるかが市場参加者には求められることになるが、このような発想が強くなりすぎると、市場は危険な方に向かうことになる。総合的に判断すると、生産者サイドのみに利益が向かう市場環境を放置することの危険性に注目する必要がある。

さらに言えば、「投資=買い」のみを中心に行う投資家の投資行動そのものの相場への影響を議論することが重要である。米商品先物取引委員会(CFTC)や米証券取引委員会(SEC)が、株式市場などの金融市場と比較の中でコモディティ市場の規制を議論しているとすれば、それこそが危険な発想である。

コモディティ価格の上昇部分を純粋に最終製品価格にまで転嫁するシンプルな構造であれば、おそらくコモディティ価格は現在のような水準で長期的に推移することはないだろう。

しかし、最終的に投資マネーのフローだけでコモディティ価格が形成されるのであれば、過去の「コモディティ市場における経験側」は否定せざるを得なくなろう。

そのような判断を下すことになるかどうかの基準は、現物市場の評価と価格水準のかい離が大きい原油価格の動向となろう。年間でもっともパフォーマンスが悪い10月および11月の原油価格が、在庫率が歴史的高水準にある現状において、マネーフローの影響のみで上昇基調を継続するような事態となれば、過去の「コモディティ市場における経験側」は完全に否定され、コモディティ市場の「完全なる金融市場化」が成立したと判断することになろう。

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*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。