ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月13日

「事業仕分け」の効果

Posted by: 田巻一彦

12日の円債市場で長期金利が低下したが、それは鳩山由紀夫内閣が進めている「事業仕分け」への期待感が高まり、歳出削減への思惑が高まったからだとの見方が一部に出ている。

だが、邦銀関係者の1人は、この指摘に首をひねる。「確かに長期金利は1.3%台へと大幅に低下したが、事業仕分けを評価して円債先物や現物を買っていたと言う話は、あまり聞かなかった」と話す。

複数の市場関係者によると、12日に行われた5年債の入札では大規模な資金量を誇る国内金融機関が大量に買ったほか、大手都銀の一角も買いに回ったとの観測が出ていたという。入札後の市場動向は、ロイターの分析記事をみていただくとして、事業仕分けが直接的なインパクトを与えなかったことは、どうも確かなようだ。

jpblogsengokuさらに公開の場で、批判の矢面に立った官僚の様子をテレビのニュースやインターネットで見た人たちの中には「彼らがかわいそうな場面もあった」と、オープンな討論の中で当時者が批判されるシステムに反対であるとの声が出ている。

あるブログの中には、かつての中国・文化大革命当時の人民裁判に近いという感想もみられた。

だが、少し視点を引いて鳥瞰的にみると、国家予算と国民の目がこれほど接近したことは、かつてなかったのではないか、と言うことに気が付く。

小沢一郎・民主党幹事長が指摘したように、分厚い予算書を見て、特定の事業の有効性や無駄な支出を見破ることは、平均的な知識しかない普通の国民にとって至難の業(わざ)だ。

それがインターネットを通じ、全ての国民が特定の事業の中身や妥当性に関する議論について、アクセス可能になったのだ。自らが納税した税金の使われ方に関し、政府予算案の作成の段階からアクセスできることになったのは、「大きな進歩」ではないだろうか。

一部の新聞は、財務省主導で歳出カットが進むことを容易にする仕組みだと主張していたが、果たしてそれだけだろうか。ある金融関係者は「情報の公開こそが、特定の集団が利権をむさぼることを防止するために有効な手段だ」と述べていた。

「由(よ)らしむべし、知らしむべからず」は、徳川幕藩体制を支えた基本的な支配原理だが、「一人一人に政道の内容を理解させるのは難しい」という発想から、ようやく抜け出して、妥当な政策を目指す動きのスタートになると考えるが、どうだろうか。

(写真/ロイター)

2009年11月06日

自民党はどこへ向かうのか

Posted by: 吉池威

tanigaki政権交代で見直しが決まった日本郵政の新社長に元大蔵事務次官の斎藤次郎氏が就任すると聞いて、多くの有権者は、政権公約(マニフェスト)と「違う」と感じたのではないか。

人事院人事官に前厚生労働次官の江利川毅氏を充てる人事を国会の同意案件にする方向でもあり、相次ぐ官僚OBの起用で民主党がこれまで主張してきた「脱官僚依存」は、政権発足からわずか2カ月も経たずに看板倒れになったとの印象を与えている。

財源、基地、ダム、年金など、総選挙で掲げたマニフェストと現実とのギャップの大きさがクローズアップされてきた。9月に発足した鳩山由紀夫内閣の中では、郵政民営化の見直しで豪腕ぶりを発揮、意気揚々とする亀井静香郵政・金融担当相を除き、各閣僚は憔悴しているようにも見える。

だが、2大政党制になった今、有権者は公約を守らない民主党に見切りをつけ、次の国政選挙で自民党支持に回るかといえば、世論の動向はそう単純でもなさそうだ。10月25日の参院神奈川、静岡両補選は、いずれも民主党新人が当選、党の再生を急ぐ自民党候補を退けた。

民主党は2003年ごろから、議員や党職員が独自の調査に基づいて政府が提出した予算の対案を提示してきた。当時は野党だったため財務省の記者会見室の利用も許されず、財務省記者クラブなどで対案に関するブリーフを開いていた。脱官僚をすでに意識し、今の政策を地道に練り上げてきたのだ。官僚の大きな協力を得て政策を作成してきた自民党の議員が、立場が変わったからといって野党時代の民主党議員のように手作りの政策を簡単に打ち出すことができるとは考えにくい。

せっかく2大政党制になったにもかかわらず「与党がだめなら野党に」という仕組みになっていない。来年の参院選で振り子を戻すのは難しいとの諦観が自民党内にもある。

ある前衆院議員は、今後連立与党の予算編成で内部分裂が起こり、民主党が自滅するとみている。「その時までにこれといった政策を打ち出せなければ、そのときは自民党が本当にだめだ」と話す。「だめだ」とは言っても、党内に新党立ち上げのエネルギーはなく、政界再編シナリオも立ち消えとなった。今後に向け特定の「空想」「妄想」もわいてこないが、それでも野党・自民党の復活を願う声はあるはずである。歴史はまだ始まったばかりなのだから。

(写真/ロイター)

2009年10月28日

長期金利上昇と鳩山政権の本気度

Posted by: 田巻一彦

JAPAN/長期金利の上昇が目立ってきた。28日に付けた1.420%は、絶対水準としては決して高くないが、1.240%まで低下した10月6日からわずか20日あまりで0.2%近く上昇したことになる。

つい最近まで円債市場には「景気の先行きがぱっとせず、金余りなので国債に資金を振り向けざるを得ない」(大手銀関係者)という声が満ちていた。

そのことを思えば、マーケットのムードはかなり様変わりしてきたと言える。

大きな点は、鳩山由紀夫政権の政策運営スタンスに関する疑念が、ジワリとマーケットに出てきたことではないだろうか。

20日の投稿でも指摘したことだが、2009年度は税収不足で6兆円超の穴が空きそうで、赤字国債で対応する方向だ。すでに麻生太郎政権の下で09年度に44兆円の新規国債を発行しているので、合計で50兆円を超す公算が大きい。

さらに2010年度は、概算要求額が95兆円に膨れ上がり、税収を40兆円とかなり多めに見積もっても、55兆円が不足する。藤井裕久財務相は、新規国債発行額を44兆円以下にするといっているものの、歳出が95兆円規模とすると11兆円、92兆円規模まで切り込んでも8兆円が足らずまりとなる。

しかし、今までののところその差額をどういった手法で埋め合わせるのか、鳩山政権から具体的な話は出てきていない。先の投稿では特別会計にメスを入れて、財源を確保する可能性を指摘した。

いただいたコメントの中には、メスではなく、なたを振るうことが期待されていたのに「もう事を荒立てないような印象を受けてしまいます」との指摘もあった。

市場心理を悪化させた要因として、日本郵政公社の新社長に斎藤次郎・元大蔵事務次官を起用した人事があるかもしれない。「官僚政治からの脱却」を掲げながら、社長・副社長に大蔵・財務官僚のOBを起用する鳩山政権に「歳出膨張を止める政治力はないとの失望感が、市場の一部にはある」(邦銀関係者)という見方が、国債の信認へのダメージになっているのではないか、との見立てだ。

大臣になって、省庁の利益を代弁するような発言も出てきた。やはり、来年度予算編成で特別会計の闇に切り込めるのかどうかが、鳩山政権にとっての大きなハードルであり、試金石でもあるようだ。

(写真/ロイター)