ロイターブログ

討論×闘論

ニュースに一言!

2009年11月16日

堅調なGDPをどう読むか

Posted by: 田巻一彦

JAPAN-ECONOMY/16日朝に発表された2009年7─9月期国内総生産(GDP)は、ロイターによる市場予想の前期比・年率プラス2.9%を上回るプラス4.8%だった。驚いたのは、好調が予想された外需の寄与度プラス0.4%を上回り、内需の寄与度がプラス0.8%になったことだ。

個人消費が前期比プラス0.7%と予想外に強く、多くのエコノミストは自動車や家電製品への政府の補助制度が後押ししたとみている。この部分は今後、緩やかに減速するとみられるが、設備投資も同プラス1.6%と大きく伸びた。

これは外需が年初よりも強く、輸出の好調が継続すると見た製造業の設備投資意欲が強いことを示している。設備投資の先行指標である9月機械受注をみても、この先の設備投資の動向はしばらく堅調さを保ちそうだ。

中国を中心としたアジア経済の成長が、年初の見通しよりも強く、エンジンが全開になりきれない米欧に代わり、新興国が世界経済をけん引していく構図が、予想よりも早く現実化しているとも言えるのではないか。

複数のエコノミストは、10─12月期も前期比プラス成長が継続すると予測。年明けも1─3月期までは、現在の成長ペースが続く可能性があるとの声も出始めている。

しかし、16日の東京市場は、GDPのデータに反応せず、日本経済に対して過度に悲観的であるようにみえる。最近の東京株式市場は世界の主要株式市場と比べ、上値が重くなっており、株価の動向を見ると、二番底に近い景気低迷を予想していると読める。

だが、現実のデータは逆に日本経済がしぶとく粘っている様子を示している。少なくとも年内に景気が失速する可能性は相当に低く、これは年初の政府や日銀などがみていたシナリオの中では、かなりよいパターンをたどっているのではないか。少なくとも一部の海外勢が言うように「日本経済はお先真っ暗」ではないように思える。

マーケットがデータを織り込みに行くのか、それとも悲観論がさらに台頭するのか。みなさんはどうみますか。

(写真/ロイター)

2009年10月22日

対中輸出頼み?

Posted by: 田巻一彦

CHINA/2009年9月貿易統計が発表され、貿易黒字は前年比でみればプラス472.3%と大きく伸びたが、前年はリーマンショックなどの混乱があって黒字が大幅に減っていたため、この伸び率で日本経済が急速に好転したとみるのは早計だ。

国内生産と密接にリンクしている輸出をみると、アジア向けは順調に伸びているものの、対米欧は「予想よりも伸びが鈍い」(邦銀関係者)との声が多い。リーマンショック後の生産・輸出の落ち込みが大幅だっただけに、伸び率の大きさだけみれば順調に回復しているとも一見みえるが、米欧の景気回復は、日本からの輸出で見た場合、アジアの回復ぶりからかなり水を空けられているようだ。

実際、9月の国別輸出をみると、中国向けが前年比マイナス13.8%の9815億円と米国向けの同34.1%の8333億円を引き離している。アジア向けは合計で2兆8039億円に上り、輸出全体の54.9%を占めている。今やアジア向け輸出が日本経済を支えていると言える。

国際通貨基金(IMF)のリプスキー筆頭副専務理事も20日、アジアは他の地域と比較して、一段と迅速かつ力強く世界経済危機から脱却するとの見解を示している。

中でも中国の成長は目立っており、今年第3四半期の国内総生産(GDP)は前年比プラス8.9%と高成長を維持し、9月の鉱工業生産は前年比プラス13.9%と市場予測のプラス13.3%を上回った。

国内企業の株価を見ても、コマツのように対中輸出比率の高いところが健闘。内需関連株の低迷ぶりと対照的な展開になっている。

中期的にもみても、家計の傷が大きい米国の個人消費が力強く回復する可能性が低いことは19日の投稿でも指摘したが、当面、日本経済は中国を核としたアジア向け輸出で時間を稼いで、態勢立て直しを図ることになると思われる。みなさんはどう考えているだろうか。

(写真/ロイター)

2009年09月24日

経済データで見る北朝鮮

Posted by: インサイトコラムニスト

*この投稿は、ロイターの「インサイト」コラムに掲載された寄稿を抜粋しました。

永野 護 名古屋市立大学大学院教授、三菱総研客員研究員

外交政策において東アジア重視を標榜する鳩山由紀夫新政権だが、今後の東アジア政策は、ASEAN(東南アジア諸国連合)プラス中韓印との通商政策と北東アジアの安全保障政策の2つの政策を両にらみで進める必要がある。特に後者の北朝鮮政策は、継続か刷新か、極めて難しい判断を迫られている。

北朝鮮政府は国民所得統計の発表を行っておらず、国際機関への同統計の報告もない。このためこの国の経済を知る唯一の手掛かりが、韓国銀行(中央銀行)が毎年央に発表する北朝鮮GDP(国内総生産)推計である。これによると2006年以降、2年連続でマイナス成長に陥っていた北朝鮮であるが、2008年は辛うじてプラス成長を取り戻した模様だ。この時期に回復へ転じた最大の要因が、農業生産の回復にある。

韓国銀行によると、北朝鮮の産業別GDPにおいて、農林水産業は全体の22%を占める。2008年はこの農林水産業が8%を超える成長を記録したことから、全体の経済成長率も3.7%へ上昇した。

しかし、韓国国内と北朝鮮27都市の気象観測を行う韓国気象庁によると、2009年は朝鮮半島全域で天候不順が続き、農業生産は大きく落ち込む見通しだ。GDPの2割超を占める農業生産が再び落ち込めば、1990年半ば以来の経済危機も再び現実化するだろう。

今年のマイナス成長の可能性が高まる中、所得の水準はどの程度のレベルにあるのだろうか。韓国銀行資料では、人口2300万人の北朝鮮の1人当たりGDP規模は最近3年間、ほぼ韓国の18分の1で推移している。これを韓国の1人当たりGDPから逆算すると、700─750ドルとなる。この所得水準は、東アジアではラオス(2007年・678ドル)とカンボジア(同・710ドル)と同レベルであり、同じ社会主義体制下にあったベトナム(2008年・1024ドル)に大きく水を開けられている。

08年末からの足元の情勢を考えると、北朝鮮では農業生産および所得水準が大きく落ち込む可能性がある。1990年代半ば並みの極端な食糧危機がこの地域の秩序を不安定化させるリスクを考えると、二国間経済制裁以外に、朝鮮半島情勢を軟着陸させるための6カ国協議の位置づけが今後は重要となる。

北朝鮮との貿易拡大を続ける中国、韓国とともに、日本は米朝協議の再開を米国に働きかけることを通じ、6カ国協議での影響力を強めてゆくことが望ましいだろう。こうした経済データから見た、今後の北朝鮮政策のあり方を考えても、東アジア重視を唱える鳩山政権にとって、対米関係は東アジアを重視すればするほど、より重要であると言える。

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*投稿におけるいかなる見解又は意見は当該コラム寄稿者自身の見解や分析であって、ロイターは、それらを是認せず、またはそれらの正確性についても保証しません。