バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が21日にジャクソンホールで講演し、世界的な経済成長の回復に向けた見通しは短期的に良好であると述べ、この後に米株式市場は上昇を続けている。

確かにこのところ、経済の好転を示すデータが出てきている。8月フィラデルフィア連銀業況指数は11カ月ぶりのプラスとなり、7月米中古住宅販売は約2年ぶりの高水準を記録した。
米実体経済は、昨年9月のリーマン・ブラザーズ破たん後の急速な景気後退から立ち直りつつある。一部の金融関係者からは「非常事態に対応した非常措置は、危機の回避が鮮明になれば、やめることも1つの選択肢ではないか」との声も出ている。
だが、ジャクソンホールでバーナンキ議長は「重要なことは金融破たんの恐れが大幅に後退したことだ」と述べつつも、リスク資産を中銀が大量に購入する非伝統的な手段の出口を明確に指し示すコメントを出さなかった。
その背景について複数の金融関係者は、米銀が抱えているCDOやCDSなどは時価評価しなくてもよくなったので、決算上は表面化していないものの、事実上、多くの銀行資産が不稼動資産として“塩漬け”になっており、金融機能が実質的には大幅に低下している現状があると指摘する。
実際、トリシェ欧州中銀(ECB)総裁は同じジャクソンホールでのシンポジウムで、金融危機から正常に戻ったとの見方が出ているが時期尚早であるとの認識を示している。
ここで注目されるのが、白川方明日銀総裁の発言だ。世界の中銀の主要な顔ぶれがそろったジャクソンホールのシンポジウムの中の講演で「低金利が継続するとの根拠のない予想を醸成することを通じて、金融政策がバブルを加速させることは回避しなければならない」と述べた。
表面的な実体経済の戻りをにらみつつ、中銀首脳は、これから先の世界経済の展開をイメージしているに違いない。出口に言及しなかったバーナンキ議長は、明らかに信用緩和政策の長期化をにらんでいるようにみえる。
これまで過度な金融緩和に警鐘をならしてきたトリシェ総裁も、金融市場の安定化と金融機関の機能回復に政策の軸足を移しているのではないか。
白川総裁は、グローバルに展開される「総緩和状況」とも言える状況が、常態化することへの危機感を強く示したと受け取れると思う。
日、米、欧の中銀総裁の本音がちらりと見えたジャクソンホールのシンポジウム。リーマンショックから1年が経過しつつある中、新たなバブルの発生にも目を凝らす時が来たと言えないだろうか。
(写真/ロイター)